東京都では、より効果的な起業家支援環境の実現に向け、令和6年度よりインキュベーション施設運営事業者向けのコミュニティ「INCU Tokyo」を開始しました。
コミュニティ内の取組の一つである、インキュベーション施設内の人材育成及びネットワーキングを目的とした「インキュベーション人材養成講座」のDay3をDeloitte Tohmatsu Innovation Parkにて開催しました。
本レポートでは、当日の様子をご紹介します。
講義 スペースマネジメント
講師 加藤 翼 氏(株式会社qutori)
この日の講義では、「空間の知覚と認識を理解することで、無意識レベルでの行動デザイン手法を身につけること」をゴールとし、下記2つのインキュベーションにおけるスペースマネジメントの考え方が紹介されました。
- 意味を宿すマネジメント
- 行動を促すマネジメント)
1つ目の“意味を宿すマネジメント”では、スタートアップや起業家が集うインキュベーション施設がもつ“意味”や“物語”の重要性についてお話がありました。施設の空間をマネジメントするうえで、目を瞑っていても心の中にその場所に想いを馳せられるような「約束の地」を生み出すことで、人々が前向きにモチベートされるという考え方を紹介いただきました。
2つ目の“行動を促すマネジメント”では、まずは『ソーシャル物理学』という学問分野の「ハードを変えることで人の行動変容を促す」アプローチ、即ち物理的な環境やインフラストラクチャーを変化させることで、人々の行動や意思決定に影響を与え、望ましい結果を導くことに焦点を当てるアプローチについて紹介いただきました。その後、各施設が導入できる具体的な要素として、下記4つのポイントを共有いただきました。
- コラボレーションを促進する空間設計
- バーチャル空間での交流と学習の活性化
- フィードバックと行動修正のデータ活用
- ナッジを用いた行動変容
講義を受け、参加者からは「設備が限られている中で入居者に行動を促すコツ」や「オンラインツールの選び方のコツ」について質問が投げかけられ、加藤氏からは過去携わった100BANCHやSHIBUYA QWSの事例のお話や考え方のコツについてコメントが返されました。
事例紹介
講師 和田 早矢 氏(バ・アンド・コー株式会社)
続いて、バ・アンド・コー株式会社和田氏の進行のもと、インキュベーション施設の企画・運営のご経験をふまえ、「コミュニケーションが生まれる・促進される空間作り」について、「co-ba」や「NEXs Tokyo」等の具体例をご紹介いただきました。
講義の中では、「コミュニケーションが生まれる・促進される空間作り」に向けたポイントとして、下記3点をご教示いただきました。
- コンセプトドリブン
- コミュニケーションの多様性
- 半仕上げ
具体的には、施設目的やコンセプトをソフトだけではくハードから視覚的・身体的に感じられたり、入居者同士が自然と「つながる」「話したくなる」きっかけを散りばめて関わり方のバリエーションを増やしたりするような空間設計上のヒントや、スペースや利用方法に一定の「余白」を残すことの重要性ついてご共有いただきました。
ワーク ペーパープロトタイピング
講師 加藤 翼 氏(株式会社qutori)
Day3ではワークとして、受講生に事前課題として準備いただいた自施設の図面を用い、紙や付箋、ハサミ等の文房具を使って施設空間のプロトタイプを作成いただきました。初めは悩みながら手を動かしている方もいらっしゃいましたが、皆さん次第に作業に没頭していき、参加者毎に空間の使い方に個性が出ていく様子が窺えました。
ワーク終盤には、小グループで自身の成果物を共有する時間を設け、各々こだわりのポイントについて発表し合いました。
交流会
プログラムの最後には、毎回恒例の交流会を実施しました。講座も3回目となり、受講生同士で顔見知りの方が増えているような様子が窺えました。また、受講生の中には個別に連絡を取ってお互いの施設を見学したり情報交換をしたりするなど、講座の受講を通じて積極的にネットワーキング形成に繋げている姿が見受けられました。
インキュベーション人材養成講座について
「インキュベーション人材養成講座」は、インキュベーション施設運営の現場に関わるマネージャー向けに、インキュベーションという全体像及び起業家・スタートアップに関する理解、コミュニティと施設運営のノウハウについて学ぶと同時に、インキュベーションマネージャー同士の相互のネットワークの構築を目指しています。
登録施設のインキュベーションマネージャーや運営スタッフを対象とし、全6回構成での開催を予定しています。
INCU Tokyoでは、今後も各種イベントの開催や登録施設向けの支援を予定しております。
インキュベーション施設運営者の方で、ご関心をお持ちの方は、ぜひ下記よりINCU Tokyoへの参加をお待ちしております。