Interview
人や仕事、情報が集まる「都心のビーチ」は、イノベーションが生まれる拠点に
渋谷の中心にありながら、ビーチリゾートのような空間を再現したLULL TECH BEACH(ラルテックビーチ)。リラックス感が漂う施設には、主にITワーカーやクリエイターが集まり、日々大小さまざまなイノベーションが生まれています。施設管理責任者を務める樺澤 舞氏が語る、創業支援にかける想いとは?
プロフィール
2018年株式会社オール・ハーツ・カンパニー入社。新規店舗立ち上げや商品開発、販売企画など幅広く経験。現在は株式会社LULLでIT技術を学びながら、コワーキング事業部責任者として運営・企画を担当。
入居者との何気ない日常会話が、新たな出会いやイノベーションのきっかけに
LULL TECH BEACHの概要を教えてください。
LULL TECH BEACHは、「都心のビーチ」をコンセプトに株式会社LULL(ラル)が運営するコワーキングスペースです。ビーチに押し寄せる波のように、人や仕事、情報が集まり、やがてそれぞれの向かうべきところへ流れていく拠点でありたい、という想いが込められています。
ブルーと木材を基調にしたインテリアや観葉植物を配し、ほのかにマリン系のフレグランスが香る空間は、渋谷という大都会にいながらリゾート地にいるような感覚を味わえます。とくに照明にはこだわりがあり、ビーチの太陽の傾きを再現して1日7回明るさが変化。パソコン作業に集中すると時が経つのを忘れてしまいがちですが、光の具合で時間の経過を自然に感じられるように工夫しています。
場所柄、ITワーカーやクリエイターの利用者が多いのですが、リラックスできる空間で生産性を上げ、さまざまな人と出会ってイノベーションが起きる施設にしたいと思っています。
支援内容において独自の強みはありますか?
一番の特徴は、私たちLULLの社員が常駐し、当社が得意とするWeb開発やTECH系のキャリア支援の面で入居者をサポートできることです。たとえば、入居者からWebページ制作の相談をいただいたり、反対にIT系のお仕事をしている方に当社の案件を依頼したり。外部の運営会社を介さないので、入居者それぞれの状況やニーズに合わせた柔軟な支援ができることが、私たちの強みだと考えています。
樺澤さんの役割について教えてください。
施設管理責任者兼コミュニティマネージャーとして、入居している方たちとLULLの社員、外部の専門家などとの繋がりを深めるイベントや交流会を企画・実施しています。最近では、環境系の事業を始めた方を招いてディスカッション形式のピッチ会を開催し、入居者や有識者も含めて意見交換ができる場にしました。
支援においては、日常の何気ない会話から入居者たちが何か困っていることがないか、気づけるように意識しています。「今日はどんな仕事をしたのか」「休日は何をしているのか」などの話をきっかけに、新たな繋がりやイノベーションが生まれることも多いので、常にアンテナを張ってキャッチするように心がけています。
「働き方の可能性を広げ、キャリアで悩む人の力になりたい」と、創業支援施設の管理者に
これまでのキャリアと、創業支援に関わることになった経緯を教えてください。
もともとは飲食業界に10年ほどいて、ベーカリーでパンをつくるという現場を経験した後、本社でマーケティングや商品開発、販売企画などに携わりました。その後、IT業界で技術を身につけたいと考えてLULLに転職し、派遣で働きながら自社のエンジニア育成カリキュラムを学びました。そんな時、LULL TECH BEACHの管理責任者ポジションの社内公募を見て応募し、現在に至ります。
施設運営に携わりたいと思ったきっかけは、前職時代にあります。コロナ禍で飲食店が大打撃を受けて同じ会社の人たちが働き口に困っている時、食品のECサイトの立ち上げに挑戦した経験から「キャリアに悩んでいる人の力になりたい」「今後は今ある働き方だけでなく、もっといろんな可能性があるはずだ」と感じていました。コワーキングスペースはまさにそうした想いに合致する場であり、当社の代表からも「人と人を繋ぎ、コミュニティからイノベーションが生まれる場をつくりたい」というビジョンを聞き、これこそ自分がチャレンジしたい分野だと感じて手を挙げたのです。
INCU Tokyoに参加した理由を教えてください。
東京都の他のインキュベーション施設との繋がりが生まれることは、LULL TECH BEACHの入居者を支援する上でも良い効果があると考えたからです。正直に言って、私はこれまでは「インキュベーションとは?」「イノベーションとは?」という知識がまったくなかったのですが、INCU Tokyoというコミュニティに入って初めて学び、理解を深めているところです。こうした学びや施設間の連携を活かし、より充実した支援を提供できるようになりたいと思っています。
人と人を繋ぎ、大きな輪にする介在者でありたい。入居者同士の交流から新たな価値を
これまでの支援で印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
以前の入居者の中に、起業や事業を進める際の補助金・助成金がより通りやすくなるように、サポートをしている方がいらっしゃいました。その方から「LULL TECH BEACHの入居者向けに勉強会を開催したい」という相談があり、実施したことがあります。入居者同士の交流が生まれ、知識を共有する場として機能したことはとくに印象に残っていますね。
創業支援のやりがいやおもしろさを感じるのはどのような時ですか?
施設を運営しているといろんな方に出会いますが、自分が介在することによって人と人が繋がり、新しい取り組みが生まれた時に嬉しさを感じます。社会的意義のあることややるべきことを事業にしている方はたくさんいらっしゃいますが、それが1つ、2つと繋がると、もっと大きな価値が生み出せるはずなのです。自分がそういう「大きな輪」にする役割を果たせた時は、やりがいを感じますね。
たとえば現在、入居者からの紹介で知り合った方とLULL TECH BEACH、当社と地方自治体も交えて進行している事業があります。1年ほどかけて取り組んでいるプロジェクトなのですが、まさに人と人との繋がりから大きな輪になっていく、インキュベーションやイノベーションの好事例だと思います。
また、LULL TECH BEACHでは「自分ができること」と「やってほしいこと」を手書きで書いて掲示板に貼り、人と人をマッチングする「Want & Giveカード」という取り組みをしています。ビーチをコンセプトにした施設なので、砂浜に流れ着くメッセージボトルをイメージしたのですが、仕事だけでなく「登山好きな人、一緒に山登りしましょう」などプライベートや趣味に関する募集も。私たちスタッフがそれを見て、マッチしそうな方に声をかけて繋がりが生まれると、とても嬉しいですね。
今後はコミュニティとしての機能を強化し、さらなるイノベーションが生まれる施設に
今後どのような方に施設を利用してほしいと考えていますか?
業界やジャンルを問わず、創業直後やこれから起業する方、挑戦してみたいという方を歓迎します。施設周辺には大学も多いので、将来会社をつくろうかなと考えている学生さんにも、アイデアを練ったり起業の勉強をしたりする場として気軽に活用していただきたいですね。
立ち上げ当初は、コワーキングスペース=「作業場」を提供する意味合いが強かったのですが、今後は創業支援のコミュニティとしての機能をさらに強化していきたいと考えています。さまざまな人が集まって交流し、イノベーションが生まれる仕掛けをもっとつくって、スタートアップとして都心でどんどん活動していきたいという方たちをサポートできればと思います。
創業支援を通じて、どのような社会を実現したいですか?
働く人すべてが今いる場所に縛られず、枠を取り外して自分の可能性を広げられる社会をつくりたいですね。現在当社では、地方でDX人材を創出し、地域の課題解決をめざす取り組みを進めています。LULL TECH BEACHが地方と都心のハブとなり、それぞれの課題を解決できる人材開発やスタートアップ支援を加速できたらと考えています。渋谷にある「都心のビーチ」から、より良い働き方やキャリアの可能性を広げていきたいと思います。
記載内容は2025年10月時点のものです。