Interview
多言語対応で外国人起業家もサポート。居心地抜群の「五感を潤す」創業支援施設とは?
壁に飾られたアートや観葉植物、漂うアロマの香りや耳に心地よい鳥のさえずり──「癒し」の空間デザインにとことんこだわった創業支援施設・BUREX FIVE。施設運営責任者を務める李 聖憲氏が、都会のオアシスのような施設の魅力と起業家支援のやりがいを語ります。
プロフィール
2009年に株式会社スペースデザイン(現ケネディクス・プロパティ・マネジメント株式会社)に入社。現在、オペレーション事業本部 サービスオフィス事業部長としてBUREX事業に参画。BUREX FIVEを含むサービスオフィスの運営を統括する。
色やアート、音、香り……各階のテーマに合わせてデザインされたリラックス空間
BUREX FIVEの施設概要を教えてください。
BUREX FIVEは「五感を潤すサービスオフィス」をコンセプトにした家具付きサービスオフィスです。4階から10階までがオフィスフロアで、各階にテーマを設けて空間をデザインしていることが大きな特徴です。
たとえば受付やラウンジがある4階は「フォレスト」をテーマにし、会議室に木々の名前を付けたり、アロマの香りなどを選んだりしています。とくに音にはこだわり、ビクターのハイレゾ空間音響デザイン・ソリューション「KooNe」を導入。自然界で採取した川のせせらぎや鳥のさえずりなどの音を朝・昼・夜の時間帯に合わせて流しています。
新橋というビジネス街で、かつ飲食店も多い繁華街の中にあるオフィスですが、建物の中ではリラックスしたり集中したりできる環境を整えています。
サポート面での強みや特徴はありますか?
外資系の入居者が多いことから、英語や他の言語でコミュニケーションが取れるバイリンガルのスタッフが常駐しています。入居時には英語版の賃貸借契約書を用意したり、都や官庁への申請書類などのご相談を受けたり、多様な利用者に向けて柔軟に対応できます。また、BUREX FIVE以外のBUREXブランドのオフィス(麹町・京橋)も利用できるので、出先での会議などに便利です。
李さんの役割を教えてください。
私は施設運営を統括する立場として、主にこれから入居してくださる方や創業される方向けのセミナーを企画・運営しています。たとえば税理士さんを呼んで創業支援などに関するセミナーを開き、その後施設の内覧会として入居希望者をアテンドする広報活動もしています。
日常的な施設運営の実務は常駐するスタッフが担当していますが、前述のようにいろんなお客さまのご事情に合わせて対応してくれるので、安心して任せられます。
さまざまな企業・人との出会いや繋がり、成長フェーズに関わるおもしろさに惹かれて
李さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
大学卒業後、クレジットカード会社にて提携カードの企画やパートナーアライアンスを経験。その後、不動産仲介会社にてベンチャー企業や大手企業のオフィス移転のサポートを経験し、BUREXブランドの運営会社(現在のケネディクス・プロパティ・デザイン株式会社の前身である株式会社スペースデザイン)へ転職。主にサービスオフィスの運営および企画業務をメインに担当しています。
不動産業界の魅力は、不動産という資産を通じてさまざまな企業の方と出会い、お客さまからの紹介などでさらに多くの人と繋がっていけること。また、サービスオフィスを提供していると、立ち上げ期のベンチャーや海外の起業家など、今後成長していくフェーズに関われることにおもしろさを感じています。
INCU Tokyoに参加しようと決めたのはなぜですか?
東京都が推奨している起業家向けのビジネスモデルに非常に興味があり、参加しない手はないと思いました。参加施設には私たちのようなサービスオフィスもあれば、コワーキングやシェアオフィス、大手企業が運営している物件もあります。そうした多様な施設同士、運営者同士で横の繋がりをつくり、情報交換や他社の事例を学びたいと思っています。
普段施設を運営するスタッフの方たちは、どんなことを心がけているのでしょうか?
実務スタッフの1人は以前病院に勤めていた経験があり、その際に「患者さんが話しかけやすい雰囲気を自分からつくりなさい」と教えられたそうです。この考えをBUREX FIVEでも実践していて、受付では利用者に緊張感を与えないように笑顔で接する、きびきびというよりは少し抜け感のある柔らかい雰囲気をつくりたいと話しています。お客さまとの自然なコミュニケーションが生まれる環境をつくり、相談や困り事があったときに気軽に声をかけていただけるような関係を構築したいですね。
入居するスタートアップが成長し、より広いオフィスに移るのを見届けるのが嬉しい
これまで支援してきた中で、印象に残っているスタートアップ企業はありますか?
人材派遣業を手がける企業が、創業後数年で急成長し、BUREX FIVEからBUREX京橋へ拡張移転された事例があります。代表もスタッフも非常に信頼できる方々で、成長を間近で見守れたのは印象的でした。代表の方はどんなに忙しくても丁寧にコミュニケーションをしてくれる方で、しかもNo.2、No.3として代表を支える方たちもとても優秀で、「この会社は伸びるだろうな」と感じていました。事業が拡大しても当社の施設を利用し続けてくれるのは、とても嬉しいですね。
そのお客さまは、BUREXにはオフィス以外にもラウンジや会議室が各物件にあり、使いたい時に使えるという利便性を評価してくださいました。また、オフィスにいらっしゃるご来客の中には車いすの方もおられ、当施設は基本的に全フロアを車いすで移動できるバリアフリーなので、その点も喜んでいただきました。
施設運営のやりがいを感じるのは、どんな時ですか?
前述のお客さまのように、会社や事業が成長してより広い物件に移った時は、「当社の施設を利用してもらえてよかった」と心から感じます。また、入居者同士の繋がりが生まれるのも非常に嬉しいですね。
BUREX FIVEは外国人の入居者も多いという話をしましたが、以前エレベーターで偶然一緒になったヨーロッパ系の入居者同士が、お互いが同じ言語を話す人だと気づき、そこから仲良くなったというケースがありました。施設の中でふとしたきっかけから自然な出会いが生まれる瞬間に立ち会えるのは、この仕事の醍醐味かもしれません。
時代に合わせて機能をアップデート。オフィスでもリモートでも仕事がはかどる施設に
今後どのような起業家に施設を利用してもらいたいですか?
BUREX FIVEのオフィスは1~5名様までの区画なので、少人数でも頑張っていこう!という方たちに業種を問わず利用していただきたいです。また、現状は外資系企業が全体の20~30%程度を占めていて、契約書や申請関係のノウハウも蓄積されてきています。外国の方は、日本という異国で起業するのはハードルが高いと感じていると思いますが、当施設は外国語が通じるスタッフもいますし、力になれると思います。
これから施設としてチャレンジしてみたいことはありますか?
2020年以前は、入居者同士の交流を目的としたパーティーなどのイベントを定期的に開催していたのですが、コロナ禍以降は中止していました。5年経って入居者の顔ぶれもだいぶ変わったので、そろそろ再開したいと考えています。
また、施設のDX化もさらに進めていきたいと思います。コロナ禍以降はリモートワークをする人が増え、毎日BUREX FIVEに出勤する人は少なくなっています。でも、オフィスという機能は必要なので「BUREX FIVEにオフィスがあるからこそリモートもはかどる」と感じてもらえるようなサービスを考えたいですね。
最後に、INCU Tokyoに期待することがあれば教えてください。
われわれのようなサービスオフィスやコワーキングスペースなど、起業家やスタートアップが利用できる場所はさまざまありますが、「インキュベーション施設」として認知されてきたのはここ数年だと思います。INCU Tokyoのように創業支援施設を後押しする事業がさらに充実し、運営会社と起業家の出会いの場がもっと増えたらと期待しています。
記載内容は2025年10月時点のものです。