Interview

経営に重要なのは「志」──挫折をも糧に“100年続く企業”を共に生み出す喜び
起業家・経営者の学びと成長を支援する「立志オフィス日本橋」。母体となる経営塾「立志財団」のノウハウを活かし、実践的なサポートを提供しています。自身も起業・経営実績を持ち、さまざまな挫折も経験してきた施設運営代表者の坂本 憲彦氏が、設立の背景や支援することのやりがい、今後のビジョンを語ります。
プロフィール
2000年に銀行に入行し、法人・個人向けの融資や営業を6年間担当。2006年に起業し、不動産賃貸業やビジネススクールなど3社10事業を立ち上げた。2017年には一般財団法人立志財団を設立し、起業家・経営者向けのセミナーや研修を行なう。書籍『6つの不安がなくなればあなたの起業は絶対成功する』が2万部のベストセラーとなる。
日本橋から100年続く企業を──起業家・経営者がつながり、学ぶ場所

「立志オフィス日本橋」の概要を教えてください。
「立志財団」という起業家・経営者の経営塾コミュニティが運営するコワーキングスペース・自習室です。日本橋駅、三越前駅、人形町駅が利用可能で、東京駅からも徒歩15分とアクセスはとても良好です。
オフィスは、日本橋にある100年続く漆器店のビルの一部を活用していることもあり、日本文化や日本の良さを発信するような和モダンなオフィスが特徴。建物自体は古いものの、フルリノベーションを行い、美しさと清潔感を大切にしています。
この立地を活かして「100年続く企業を生み出す」ことをめざし、日本橋から世界に羽ばたく起業家・経営者の育成のため、月20回ほど勉強会を開催。現在約120社が会員として参加し、そのうち30社程度がオフィスを利用しています。
会員にはどのようなジャンルの起業家・企業が多いですか?
個人事業主からある程度の規模の会社まで。業種はITや人材派遣、不動産、コンサル、カウンセラー、士業などさまざまです。地方企業が東京オフィスとして利用するケースもあります。年齢層は30~40代が中心ですね。
具体的な支援内容を教えてください。
私は銀行出身で、約20年にわたって起業家・経営者サポートを行ってきました。自身もこれまで会社を大きく成長させた実績と、また1度社長を辞めた経験もあります。その挫折も含めて、実践的な経験とノウハウを提供できることが強みです。
経営塾が母体のため、単なるオフィス提供ではなく学びの場の提供に力を入れており、資金調達やビジネスモデル構築、事業計画、マーケティング、財務、人材育成、組織づくりなどさまざまな経営支援を行っています。また、約15名のコンサルタントが所属しており、会員は月1回無料で経営相談を受けられます。
他にも、オンラインも含めて交流会を開催し、会員同士の横の連携も図っています。「志でつながる」がコンセプトのため、世のため・人のためにより良い仕事をしていきたいという方たちが集まり、有意義な時間を過ごしています。
「弱いまま成功する」。挫折から見出した“志”の力を伝えるべく、新たな挑戦へ

坂本さんのこれまでのキャリアを教えてください。
大学卒業後、銀行に就職して、6年間法人・個人向けの融資や営業を担当しました。その中で、経営者や資産家の方々に、会社の拡大過程や苦労した経験などを詳しく聞いた経験が大きな財産となりました。とくに、ある不動産会社の社長さんの姿が印象に残っています。本業である不動産で収益を上げながら、どこか余裕があって、地域全体の発展を考えているような方でした。その方のまわりにはいつも人が集まり、地域の方々の交流の場となっていて、それを見て経営者はおもしろそうだなと感じたんです。
そこで、30歳で銀行を辞め、起業塾でネット通販やネットマーケティングについて勉強しました。得た知識をもとに、もともと自身で持っていた不動産投資と融資のノウハウを組み合わせて、教材を作成しネット通販事業を開始。なんとか軌道に乗ったことをきっかけに不動産投資セミナーを行うようになり、ビジネススクール事業を中心としながら、さまざまな事業を展開していきました。
コワーキングスペースを立ち上げるに至った経緯をお聞かせください。
2014年ごろ、経営していたグループ会社が3社で売上5億円規模に成長し、ビジネススクールは年間600人もの生徒を抱えるまでになっていました。売上は過去最高を記録していたものの、社内の人間関係が悪化。最終的に社長を辞任せざるを得ない状況に追い込まれてしまって……。売上はあるのに誰も幸せではない──この状況をとても苦しく思ったことを覚えています。
そこに、父親の死が重なりました。「人は必ず死ぬ」という当たり前の事実に直面し、自分の人生で何をしたいのかを考えました。そして、もう一度起業家の育成にきちんと取り組みたいと、経営を勉強し直すことを決意したんです。
勉強を続ける中で、松下幸之助経営塾で出会った「立志」という言葉に大きな衝撃を受けました。今まで、私は経営者として「どうすればお金儲けができるか」しか考えていませんでした。しかし、“志”つまり「何を成したいのか」という軸がないと途中で折れてしまうと気づいたんです。そんな経営における志の重要性を多くの人に伝えたいと思い、2017年に経営塾、そして2020年にコワーキングスペースを立ち上げました。
挫折された経験が大きなきっかけになったんですね。
父の死後、幼い頃に亡くなった母について知る機会があって。それまで私は母を受け入れることができなかったのですが、調べていくうちに事情がわかり、「人は弱くてもいいんだ」という気づきを得たんです。それまでは成功する経営者は何でもできるスーパーマンのような存在だと思い込んでいましたが、弱さを受け入れ、周りにもさらけ出して、仲間の力を借りながら経営していくべきなんだと。そこから「弱いまま成功する」という新しい目標を見出しました。
以前は人に頼ることが少なかったのですが、現在は従業員や家族に積極的に助けを求めながら運営しています。とくに、妻からの支援が大きいですね。苦しかった時期に相談したところ、しっかり話を聞いていろいろなアドバイスをくれて。現在では会社に不可欠な存在となっていて、私では気づけないきめ細やかなフォローをしてくれています。
起業家の本質的な“軸”は何か?共に掘り下げ、形にしていけるのが醍醐味

これまで支援してきた中で、印象に残っていることを教えてください。
VRを使ったトレーニングシステムを開発し、会社を立ち上げた方が印象的でしたね。当初開発していたのはVRのけん玉ゲームで、それで5分程度練習するだけで、実物のけん玉もできるようになるというものでした。そこから一緒にビジネスモデルを掘り下げていく中で、その方の志は「愛と技術で“できない”を“できた”にする」ということがわかったんです。
その志を軸に、けん玉は市場規模が小さく限界があったため、より大きな市場であるゴルフ分野にシフト。VRゴルフトレーニングシステムを開発した結果、大手企業への導入が決まりました。そうやって志を大切にしていると良い仲間が集まり、現在は20名程度の会社に成長。さらには溶接メーカーからの依頼で溶接工のトレーニングシステムを開発するなど、事業を拡大しています。
支援をする上で大切にしていることは何ですか?
起業家の本質的な「軸」を見出し、それをぶらさないことです。そのため、私たちは“100年の事業計画書”を作ることを勧めています。具体的には、「自分が死んだ後に何を残したいのか」を見定めて100年後から逆算し、30年後、20年後、10年後という長期的な視点で事業領域やビジネスモデルを明確にします。そして、5年後、3年後、1年後の中期的な計画。6カ月、3カ月後の実行計画として「誰が何をするか」まで落とし込むんです。このように、長期的な視点を持って事業計画を作ることで、経営者自身もぶれずに会社を運営できるようになります。
起業家や経営者の支援をするやりがいを教えてください。
一番は、人がどんどん変わっていく姿を見られることですね。起業家・経営者は、成功しているように見えても内面では苦しんでいる人が少なくありません。彼らが心からやりたいことを一緒に探り、それを形にしていく過程を支援できることが楽しくて、私はこの仕事をやっています。仕事を楽しんでいるという意味では、銀行時代に出会った不動産会社の社長さんに近付けているかなと思いますね。
日本や世界をより良くするリーダー、それを導くコンサルタントを育てたい

どのような起業家やスタートアップの方に入ってきてほしいですか?
真摯な志を持って事業に取り組みたい方を望んでいます。たとえば、すでに起業したものの売上だけを追求して苦しくなってしまっている方や、やりたいことはあるがビジネスとして形にできていない方、売上が上がっていない方など。そういった方々にはとくに支援ができると考えています。
経営は綺麗事ばかりではなく、皆さん極限まで追い詰められたりすることもあります。その部分をお話しいただき、一緒に理解し合える存在になりたいですね。せっかく想いを持って起業したのに、諦めてしまうのは残念ですから。
今後の目標や展望を教えてください。
利益追求型のリーダーではなく、日本や世界をより良くしていきたいと考えるリーダーを育成することをめざしています。
そのために、起業家・経営者を導けるコンサルタントの育成にも力を入れています。スキルや知識だけでなく、リーダーとしてのマインドや考え方をきちんと伝えられる指導者を増やしていきたいですね。
INCU Tokyoに参加された理由を教えてください。
「志からの起業」というコンセプトを広めたいと考え、東京都との連携に魅力を感じて参加しました。とくに、東京の中心である日本橋という立地を活かして、他の施設との連携を図りたいと考えています。当施設は経営塾が母体で、経営指導が主体である点が特徴です。その面で課題を抱えているインキュベーション施設があれば、起業家や経営者が何に悩んでいるのか、どういうところに問題があるのかなどについて知識をシェアすることで、貢献できると思っています。
記載内容は2025年3月時点のものです。
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