Interview
まちの発展と起業家の夢をつなぐ。xBridge-Kyobashiの使命と展望
YNK(八重洲・日本橋・京橋)エリアの発展を下支えするインキュベーション施設「xBridge(クロスブリッジ)シリーズ」。中でも東京建物が自ら運営し、幅広い入居者を迎えているのが「xBridge-Kyobashi」です。施設担当者を務める濱村 孝英氏に同施設の特色や担当者としてのやりがいを聞きました。
プロフィール
2021年東京建物株式会社に新卒で入社。入社後は3年間住宅賃貸事業部にて、賃貸マンションの「Brillia ist」シリーズの事業推進を担当。2024年4月よりまちづくり推進部に異動し、現在はxBridge-Kyobashiの運営を行うほか、YNKエリアのイノベーション・エコシステムの構築に資する戦略立案も行う。
多様性が育むビジネスの芽。xBridge-Kyobashiが提供する起業の土壌
まずはxBridge-Kyobashiの特徴を教えてください。
当施設はYNK(八重洲・日本橋・京橋:インク)エリアにおけるイノベーション・エコシステムの発展を目的として設立されたインキュベーション施設です。京橋駅から徒歩1分、東京駅からも徒歩圏内という絶好のロケーションに位置します。2フロア構成で、執務中心のフロアとイベントスペース・会議室などのスペースがある2層に分かれています。
特筆すべきは、充実したイベントスペースです。着席80人、立席を含めると100人程度を収容できる広さがあり、入居者の方々に好評をいただいています。入居者主催のイベントはもちろんのこと、施設側でYNKエリアのコミュニティ醸成につながるようなイベントも実施しています。
YNKエリアで起業するメリットを教えてください。
まず、国内外へのアクセスのよさです。羽田空港や成田空港への近接性が、国内外での事業展開に有利に働きます。次に、日本有数の大企業の集積地であることです。大手町・丸の内・有楽町にも近いこのエリアは、スタートアップと大企業の連携を容易にします。
そして最近の調査によると、このエリアでのスタートアップの創業数が2018年比で約3倍に増加しており、東京都内でトップクラスであるとも言われています。これらの要因からYNKエリアでの起業が注目されるようになってきています。
現在はどのような企業・起業家が入居しているのでしょうか?
現在(2024年11月時点)8社が入居しており、業種は幅広く、特定の分野に限定していません。特徴的なのはスタートアップ企業だけでなく、その支援者であるベンチャーキャピタル(以下、VC)なども入居している点です。また、当施設がXTechグループと共同運営の形態を取っているため、XTech Venturesの投資先企業が多いことも特徴です。当施設の前身である「xBridge-Tokyo」の時代から引き続き利用いただいている企業もあります。
入居前面談はありますが、事業分野や創業年数に特段の縛りはなく、創業間もない企業から数年が経過している企業まで幅広く受け入れています。この多様性が、新しいアイデアや協業の可能性を生み出す土壌になっており、入居者同士が切磋琢磨しながら成長されていると感じています。
不動産開発と起業の意外な共通点──若手社員が見出したイノベーションの本質
xBridge-Kyobashiが生まれた背景を教えてください。
xBridgeシリーズの発端は、2018年に八重洲にオープンした「xBribge-Tokyo」にあります。当時より東京建物はYNKエリアで複数の再開発プロジェクトに携わっており、このエリアの将来ビジョンを検討する中で、新しい人材を呼び込む必要性が認識されました。
そこで新規事業の一環としてスタートアップ支援が考案され、生まれたのが「xBridge-Tokyo」。その後、3回の移転を経て、現在の「xBridge-Kyobashi」へと発展しています。ちなみに現在、運営母体や趣旨は異なりますが、同じxBridgeシリーズとして「xBridge-Kyobashi」のほかに「xBridge-Yaesu」「xBridge-Global 」という施設もございます。
濱村さんのご経歴とxBridge-Kyobashiに関わることになったきっかけをお聞かせください。
幼少期から鉄道が好きで、まち歩きを楽しむ中で、まちに付加価値を与えるデベロッパーの仕事に魅力を感じ、東京建物に入社。最初の3年は賃貸マンションの開発・運営・売却などに携わりました。不動産の専門知識を深めながら、自分のアイデアを交えてマンション作りに取り組んだ経験は今でも大切な財産になっています。
そして2024年4月、「不動産だけでなくその周辺の事業についても学びたい」という思いから、「xBridge-Kyobashi」の運営に携わることに。実はインターン生時代にもxBridgeシリーズの運営に軽く触れる機会はあったのですが、実際に担当者として任されるのはこれが初めてです。これまでとはまったく異なる業務のため、再び新入社員になった気持ちで一から学んできました。
実際に起業を支援する中で感じたのは、起業と不動産開発はよく似ているということ。どちらも進行には一定の型があり、その通りに進めれば会社や建物自体は作ることができます。一方で重要なのは、作り手がその「箱」にどんな魂を込めるのか。その魂の込め方が、会社や建物のあり方を変えていくのだなと実感しています。
配属から半年、どのように業務を学んでいきましたか?
入居者の皆さんと話していると、さまざまなニーズがあることが伺えるのですが、初めのうちは受け取った課題をどう解決したらよいかわからなくて悩みましたね。現在は私を含めて3人の担当者で運営しているので、他のメンバーに相談して解決することが多いです。それでも解決策が浮かばない時は、VCに就職した友人やスタートアップに就職した知り合いに実際の困り事やどんな支援があったらいいかを聞いてみることも。入居者の役に立てるよう、勉強の日々です。
熱い思いに触れる喜び──インキュベーション施設運営から見えてきた起業家の魅力
入居者と関わる中でとくに印象的な出来事はありますか?
定期的に行っている面談で、入居者の皆さんからいただく言葉は印象深いですね。最近も「ここの施設は自由度が高くて本当に助かります」と、ありがたい言葉をいただき、胸が熱くなりました。確かに当施設はスケジュールさえ合えば会議室もイベントスペースも、冷蔵庫さえも無料で自由に使えるので、入居者にとって利便性が高いのかもしれません。
また入居者の要望に柔軟に対応し、みんなでオフィスを作り上げていくという文化も高い満足度につながっているようです。私自身、不動産開発での経験を活かし、できるだけ「No」と言わない運営を心がけています。一見、無理難題と思える要望についても、その意図や真意を伺い、どうにかして実現できる方法がないか考えるようにしています。
施設運営をする上でとくに大切にしていることを教えてください。
施設にいる時はできるだけ入居者とコミュニケーションをとることを大切にしています。あとは社会人として当たり前のことですが、問い合わせがきた時はできるだけ早く返答するなど、入居者が安心して相談できる存在でありたいと思っています。時には「建物を借りたい」など不動産関連のご相談をいただくことも。その際は、社内外のネットワークを駆使してどこかの企業とおつなぎすることもあります。
どんな時にやりがいを感じますか?
この仕事の最大の楽しさは、爆発的な成長をめざす起業家の熱い思いを直接聞けることです。起業家の皆さんの世界を変えていこうとする強い課題意識と改善意識に触れられることは本当に貴重な経験。その姿から日々学ぶこともありますし、ほんの少しでも事業の手助けができていると思うとうれしいですね。
とくに印象に残っているのは、Webサイトにコードを1つ入れるだけでチュートリアルができるサービスを提供する会社の創業者です。この方はWebサイト制作の仕事で「わかりづらい」という課題を感じ、その問題を自ら解決するために会社を設立されております。課題を感じただけでなく実際に行動を起こし、人生をかけて解決しようとする覚悟に深く感銘を受けました。さらにその熱意に惹かれて社員やインターンが集まり、新卒採用まで実現させた時は「熱意のある人の周りには、たくさんの人が集まってくるのだな」と感動しました。
「伝統」と「イノベーション」の調和──YNKエリアで描く、起業支援への思い
今後どんな方々に入居してほしいですか?
具体的な形式は問いませんが、YNKエリアの発展に貢献していただける方々です。たとえば、イベントを開催するのでも、本社を置くのでも構いません。何らかの形でこのエリアの盛り上げに協力してくれる方々を歓迎します。YNKエリアは多様性が特徴ですので、分野も問いません。このミッションに共感し、まちの発展に寄与しながら自社も成長していける企業との協働を楽しみにしています。
INCU Tokyoに参加した理由やこれから期待していることを教えてください。
INCU Tokyoの登録施設になることで、より多くの方に知っていただけるのではないかと思ったんです。実際INCU TokyoのWebサイトができてから、お問い合わせが増加しており、一定の効果を感じています。
今後はINCU Tokyoを通じて、他のインキュベーション施設との交流にも積極的に取り組みたいと考えています。このような交流を通じて、より幅広い支援やネットワークの構築ができると期待しています。
最後にこれから起業を考えている人や入居者の皆さんへメッセージをお願いします。
YNKエリアを盛り上げていくことがわれわれの最大のミッションです。創業の地や本社の所在地は、会社のカラーや印象に大きく影響します。YNKエリアは今後10~20年間の内に、日本で最も変革していくまちの1つだと思います。また、江戸時代から脈々と続く文化もあり、大都会でありながら「故郷」のような安心を感じる場所だと考えています。
私たちはさまざまな支援メニューを用意しており、単なるオフィス提供だけでなく、入居者同士のコミュニティ作りをめざしています。起業を考えている方は、ぜひ一度意見交換させていただき、入居に向けて一緒に進めていけたらと思います。YNKエリアで、皆さんと新しい未来を築いていけることを心から楽しみにしています。
記載内容は2024年10月時点のものです。
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