Interview

外から応援するのではなく、人生を背負う覚悟で共に走る。大変だけど、それがやりがい
水道橋にあるStartupSide Tokyoで責任者を務める小泉 祐司氏。茨城県でコワーキングスペースやインキュベーション施設の運営などに携わった後、活躍の場を東京へと移しました。「起業家の人生を背負う覚悟で、支援ではなく伴走する」と語る小泉氏の、起業家への想いや仕事のやりがいとは。
プロフィール
市役所職員としてのまちづくり・民間企業での行政計画策定・インキュベーション施設「つくばスタートアップパーク」のコミュニティマネージャーを経て2023年10月より株式会社ツクリエに入社。直営施設のフラッグシップとなるStartupSide Tokyoの責任者として、起業支援の活性化に向け活動している。
専門分野を活かして実務的な課題を解決。起業家に寄り添い成長速度を1.1倍にする

まずは、StartupSide Tokyoの特徴を教えてください。
当施設は7〜8階が入居型オフィス、9階がコワーキングスペースになっていて、入居者はオフィスとオープンスペースを使い分けながら柔軟に働くことができます。
一人企業から従業員が増えていく過程までサポートすることを想定しており、創業初期からシリーズAあたりまでの企業であれば、多様な働き方に対応できる施設になっています。
情報やノウハウのインプットとアウトプットを両立できる空間づくりが大きな特徴で、これまで幅広い業界の企業がのべ70社ほど入居しています。
起業支援における特徴や強みは何でしょうか。
最大の強みは、経営専門人材であるインキュベーションマネージャーが社員として常駐しているため、起業家が直面する実務的な課題にいつでも対応できることです。
たとえば、銀行やVC(ベンチャーキャピタル)に相談する際の資料作成やピッチイベントでのプレゼンテーション、見積書の項目設定などは、多くの起業家がぶつかる課題ではあるものの専門家が存在しない領域と考えています。
当施設には、中小企業診断士やMBAを取得しているインキュベーションマネージャーがおり、各メンバーが強みを活かしながらサポートしています。
運営会社である株式会社ツクリエは、「スタートアップサイドでいこう」というミッションを掲げています。このミッションを私たちは良い時も悩んでいる時も立ち止まっている時も、起業家に寄り添って伴走支援していくことで成長速度が1.1倍になるように、という考え方で施設運営を行っています。
こんなにイキイキと仕事をしている人たちがいるのか──起業家に惹かれて支援の道へ

小泉さんのこれまでのキャリアを教えてください。
新卒で茨城県の水戸市役所に入り、商店街振興など街づくりの業務に携わっていました。その後、水戸市がコワーキングスペースを開設することになり、私は運営担当として起業支援イベントを企画するなど、コミュニティ作りに従事しました。この仕事がとてもおもしろく、2019年に転職。コミュニティスペースの運営や自治体の行政計画策定、中小企業の新規事業企画などを行っていました。
2021年からは、つくば市にあるインキュベーション施設の運営を担当。ここでは毎週イベントを企画し、125本のイベントで約8,000人を集客しました。
ツクリエに入社したのは2023年10月です。つくば市や茨城県で培ってきた経験をもっと大きなエリアに広げることができないかと考え、全国にインキュベーション施設を構えているツクリエを選びました。
どんなところに起業家を支援するおもしろさを感じましたか?
「こんなにイキイキと仕事をしている人たちがいるんだ!」と知ったことです。それまで私は、仕事は生活のためにするものと考えていました。他方、出会う起業家たちは皆、「自分がやりたいことをやっている」「大変だけれど楽しい」という人ばかり。その姿を見て、かっこいいなと思いました。
また、転職先である2社目の代表にも影響を受けました。私の1歳上で、知り合った時は27歳。それなのに、たった1時間話しただけで「世の中にはこんなすごい人がいるんだ」と衝撃を受けたんです。そういったすごい人たちに惹かれたことで、起業家支援の仕事にのめり込んでいきました。
共に走るランナーとして、筋トレから本番まで一緒に取り組む

起業家に寄り添いながら伴走する上で、心がけていることはありますか?
起業家は本来、ひとりで進んでいけるものだと考えています。ですから、私たちの役割は「支援する」というよりも、成長速度を1.1倍に加速させたり、意思決定力を1.1倍にしたりするようなお手伝いをすること。そのために、相手が相談しやすい状態を作ることを心がけています。私たちの何気ない一言が、起業家にとって大切なものになればいいなと思っています。
また、企業同士をつなぐ機会も多くあるのですが、必ずしもすぐに仕事に結びつかない場合もあります。いつか違う場で何かを生み出せるように、友達になれるような雰囲気づくりを大切にしています。
企業同士をつなぐことも含め、これまで起業支援に携わってきた中で、とくに印象に残っている出来事を教えてください。
以前働いていた施設での出来事となりますが、愛知県にある環境負荷の少ない歯磨き粉を作っている企業から相談を受けたことがあります。ケースも環境に配慮したものを使いたいということで、つくば市にあるものづくりのスタートアップをご紹介しました。すぐに意気投合してどんどん話が進み、長野県にある企業も巻き込んで3社で開発を進めることになったんです。正直、私はご紹介しただけなのですが、その後も新しい展開があるたびに連絡をくださいます。
私たちの仕事は、どれだけ貢献できたのかの基準が見えにくいものですが、こうして継続的に報告をいただけることは、とてもうれしいですよね。
インキュベーションマネージャーとしてのやりがいを教えてください。
インキュベーションマネージャーの定義は施設や会社によって異なりますが、「起業家を応援できること」は、どの施設でも共通したやりがいだと思います。
ただ、応援と言っても、チアリーダーではありません。外から応援するのではなく、共に走るランナーとしてストレッチや筋トレから一緒に取り組み、ランニングをして、レース当日も伴走する。
だからこそ、起業家の人生を背負う覚悟も必要ですし、私たち自身も常に学び、同等のナレッジやコネクションを持つことが求められます。ハードな面もありますが、それがおもしろさややりがいだと考えています。
起業支援を社会インフラに──INCU Tokyoで支援のクオリティ向上を

どのような起業家、スタートアップに入居してほしいと考えていますか?
仕事の進め方はもちろん、仲間がほしい、ちょっと行き詰りを感じているなど、何かしら悩みを抱えている方に来ていただきたいですね。私たちや入居企業の方たちと話をすることで、何か刺激を受け、頑張るきっかけを得てもらえたらうれしいです。
StartupSide Tokyoを通して、実現したいことを教えてください。
私たちは、「起業支援を社会インフラにしたい」と考えています。起業支援が社会インフラとして機能することで、支援の質が上がり、起業家がもっと増えていき、成長速度も上がり、スタートアップの存続率や拡大率も向上していくはずです。そういう未来を作りたいですね。
INCU Tokyoは、まさに支援の質を上げることも目的の一つです。INCU Tokyoに期待することや、コミュニティメンバーと協力してみたいことはありますか?
私はこれまで、ユーザーとしてさまざまな施設を見てきました。その中で感じるのは、施設を運営したりコミュニティを作ったりすることと起業支援はまったく別だということ。起業家が求めているのは、交流会などのコミュニティ以上に、成長のための支援です。
この支援のノウハウをINCU Tokyoのメンバーで共有することで、支援する側のクオリティを上げていくことが、INCU Tokyoというコミュニティを作る意義だと思います。
記載内容は2024年9月時点のものです。
インキュベーション・
コミュニティ
「INCU Tokyo」へ参加する
募集概要を確認のうえ、
下記から申し込みください。
