Interview

小倉氏が笑顔で正面を向いている様子
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多摩地域の成長を牽引する存在へ──me:rise立川が描く起業家たちとの未来

たましん地域/未来共創センター me:rise 立川[ミライズタチカワ]

2013年に多摩信用金庫に入庫した小倉 航氏。2022年から価値創造事業部法人支援グループで創業支援に携わり、2023年からは当金庫が運営する「たましん地域/未来共創センターme:rise立川(ミライズタチカワ)」のインキュベーションマネージャーとして運営を行っています。地域貢献に携わる喜びや今後の展望について語ります。

プロフィール

2013年多摩信用金庫へ入庫。2店舗での支店にて個人向け、法人向けの営業を経て、立川市役所へ外部出向し企画政策課へ配属。行政において企画運営に取り組み、2022年に価値創造事業部法人支援グループ創業支援担当へ着任。創業者の個別相談や創業セミナーの企画運営、ビジネスコンテストの企画、実施をしている。

会員数は200名超。金融機関職員が常駐し、年間300件以上の相談を受ける

me:rise立川の1Fオープン席エリア

はじめに、me:rise立川について概要を教えてください。

me:rise立川は、2023年2月に東京の立川駅から徒歩5分の場所にオープンした新しいタイプのインキュベーション施設です。多摩信用金庫の旧本店だった建物の1階と2階を改装し、コワーキングスペース・インキュベーションオフィスとして生まれ変わりました。施設の運営は多摩信用金庫が主体となっていますが、一部の運営を株式会社キープ・ウィルダイニングに委託し、金融機関としての専門性と民間企業の運営ノウハウを組み合わせた、独自の支援体制を構築しています。

開設して約1年半ですが、200名を超える会員の方々にご利用いただいており、いまも増加傾向にあります。会員の男女比はおよそ6対4で、30代から40代の方が中心です。デザイナーやカメラマン、アパレル関係者などフリーランスの方もいれば、テレワークの拠点として利用される会社員の方も増えてきており、働き方の多様化にも対応しています。

また当施設は、オフィススペースの提供にとどまらず、会員同士の交流を促進するためのバーカウンターを設けるなどコミュニティの形成にも力を入れている点が特長です。

創業支援をするにあたって、どのような取り組みをしていますか?

当施設の強みとして、多摩信用金庫職員がインキュベーションマネージャーとして常駐しているため、事業計画書の作成支援や補助金の相談といった専門的な個別相談を行うことができます。実際に、年間300件以上の相談を受けています。

また、創業に必要な基礎知識を提供する創業セミナーも定期的に開催しています。毎回16名の定員ですが、申し込み開始後すぐに定員に達することも多いです。さらに創業5年未満の方を対象に、株式会社AGORA、株式会社町田新産業創造センターと共催でビジネスコンテストも開催しています。本コンテストは、選考過程にレベルアッププログラム(創業スクール)を取り入れることで、参加者のビジネスプラン、アイデアのレベルアップを図るとともに、参加者同士や主催者、連携支援者とのネットワーク構築を図り、参加者の事業・アイデアの加速化を応援することを目的にしています。

生まれ育った多摩で、地域貢献をしたい──金融機関の強みを活かした創業支援

me:rise立川の階段を登ったスペース

小倉さんのキャリアと、創業支援に携わるようになった経緯を教えてください。

私は多摩地域で生まれ育ち、学生時代は社会学部でコミュニティビジネスなどを学んでいました。地元が好きで、就職活動の際にも「地域貢献」を軸として、多摩地域を盛り上げていきたいと思っていたところ、多摩信用金庫に出会いました。地域のための金融機関として機能し、金融面の支援だけでなく創業支援やまちづくりなど幅広い業務を行っているところに惹かれ、入庫を決意しました。

入庫後は8年ほど外回りの営業を行い、2021年に立川市役所に1年間出向しました。立川市では、予算の範囲内で事業の企画を立て、スケジュールを組み、実行する業務に携わりました。金庫では学ぶことができない、行政の考え方が学べて非常に勉強になりましたね。

そして2022年から価値創造事業部法人支援グループ創業支援担当となり、2023年に当施設のインキュベーションマネージャーに着任しました。外回り営業の際にも創業する方の融資相談は受けており、やりがいを感じていたため、志願してこの担当に着任しました。より専門性を磨くことで、個人のやりがいだけでなく当金庫全体の支援力向上につながると考えたからです。

me:rise立川に関わる中で、どのようなやりがいを感じていますか?

創業をめざしている方々により近い立場で支援を行うことができ、日々新しい気づきや学びがあります。夢を実現するために重要な資金相談に携わることの重みを実感しますし、創業者の方々からいただく感謝の言葉は、私にとって大きな励みとなっています。小さな店舗のオープンから大きなビジネスの成長まで、成功事例が増えていくことで、地域全体が盛り上がっていくのを感じられることもやりがいの1つです。

また、創業を考えている方々の思いや、そこに至るまでのストーリーを直接聞けることも良い点です。それぞれ異なる背景や動機を持っているので、多様性に触れることも興味深いです。

孤独に寄り添い、熱意に耳を傾ける──起業家の支援で心がけていること

me:rise立川の個室スペース

創業支援で印象に残っていることはありますか?

都内のインキュベーションオフィスを出て、別の場所を探されている企業への支援です。当金庫に融資相談に来られた際にオフィスを探していることがわかり、「me:rise立川」を紹介したところ気に入っていただき、入居が決まりました。金融機関が運営している当施設ならではのメリットを感じていただけたのだと思います。

さらに会員同士のつながりも功を奏しました。会員には人材紹介を行っている会社があり、そこから働く方を紹介いただいたんです。この企業は今後上場をめざしているので、引き続き支援を行っていきたいです。

支援する上で心がけていることはありますか?

相談のハードルを下げるためにも、円滑なコミュニケーションが重要だと考えています。200名以上の会員がいる中で、顔見知りの方からまったく話したことのない方までさまざま。日ごろから挨拶を交わすなど、相談しやすい雰囲気のある環境づくりに努めています。

また、自分のお店を持ちたいと長年夢見てきた方も多いのですが、一人で考えているうちに孤独な気分になってしまうという声もよく聞きます。そういった方々に対して、事業計画の策定支援や資金調達のアドバイスを行っています。同時に、起業家の思いや熱意をしっかりとヒアリングして把握するようにしています。熱意の表れは、今後の営業を続けていく上で最も大切なポイントであり、創業支援においても重要な指針だと思っています。

新しい価値を地域から世界へ──起業家たちと共に描く未来の仕事

me:rise立川の働くスペース

どのような起業家に入居してほしいと考えていますか?

起業家やベンチャー企業の皆さんと一緒に多摩地域の未来を創造していきたいと考えています。ビジネスをスケールアップしたい方や新しい技術・ノウハウを持っている方、新産業の創出につながるようなおもしろいアイデアを持つ方々に注目しています。そして何より、me:rise立川を拠点として積極的にビジネスを展開していきたいという熱意のある方を求めています。

多くの人が居住・勤務している多摩地域の市場性を活かして多様な働き方を推進すると共に、多摩地域の未来を創造していける方々との出会いを心待ちにしています。

今後、めざしていることを教えてください。

入居する企業がスケールアップし、大きな会社へと成長していくだけでなく、創業相談に来られた方々が地域で店舗を開くなど、地域全体の活性化につながることも期待しています。「多摩で起業するならme:rise立川」というイメージを定着させたいですね。

また、INCU Tokyoで知り合った方々と合同の交流会も企画中です。この交流会の目的は、施設間の垣根を超えた交流を促進することです。東京にある異なる施設の事業者たちが一堂に会し、地域の垣根を超えて触れ合える機会を創出したいと考えています。

me:rise立川は地元の信用金庫が開設した施設であり、職員が常駐して創業相談に対応し、事業支援をすぐに行えるところが大きな強みです。ただ、そこの強みがまだまだ活かされていない部分があるため、会員とのコミュニケーション方法については改善していきたい部分です。

多摩地域から新しい価値を生み出し、日本全体、そして世界に発信していく。そんな大きな夢を、me:rise立川から実現していければ嬉しいです。

記載内容は2024年10月時点のものです。

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