Interview

正面を向く合戸氏
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起業家と大企業の架け橋になりたい――若き起業家たちと創る新しい価値とカルチャー

SENQ青山並木通り

2024年に中央日本土地建物に転職し、SENQ(センク)を起点とするオープンイノベーション推進に取り組む合戸 隆氏。若い起業家たちが集まり、新しいカルチャーや価値観を創造できる環境作りに注力しています。前職での経験を活かした多角的な視点をもとに取り組む、起業家支援の可能性に迫ります。

プロフィール

新卒で大手石油会社に入社。営業・人事・役員秘書・新規事業開発などジェネラリストとして幅広い業務を経験。新規事業開発では自社の将来像を模索しながら積極的に他業界・他企業との連携・協業を推進。2024年から中央日本土地建物株式会社イノベーション開発室にてオープンイノベーション施設でのスタートアップ支援を担当。

先駆者が集う「SENQ青山並木通り」が描く、新たな価値観とカルチャー創造の場

銀杏並木の様子

SENQ青山並木通りの特徴について教えてください。

中央日本土地建物が展開する「SENQ」は、多様な業界から先駆者が集まり、オープンイノベーションを加速させる協業と共創の場として2016年に1号店を展開。運営業務は委託しているコクヨ&パートナーズ株式会社と連携しながら、私は主にSENQのオープンイノベーション強化・推進業務を担当しています。

SENQは各拠点に特色があり、たとえば六本木の拠点では起業家同士が切磋琢磨してIPOをめざす雰囲気が強く、霞が関の拠点では中央省庁との接点が多い企業や法律事務所など比較的フォーマルな業種の方が多いという特徴があります。その中でSENQ青山並木通りは、比較的若い経営者が多く、新しい価値観やカルチャーを創造していく拠点として、独自の存在感を示しています。

ロケーションも抜群で、神宮外苑のイチョウ並木がラウンジから一望できます。また、個室や小規模のルームも備えており、コワーキングスペースとしても快適な環境を提供しています。

この施設ならではの独自性や強みなどはありますか?

SENQ全体でとくに力を入れているのは、会員同士のコミュニティづくりです。1号店立ち上げ当初から、拠点を横断して定期的な会員イベントを実施してきました。

具体的な取り組みとしては、店舗の垣根を越えた周年イベントや交流会を開催しており、これらを通じて会員同士が自発的にコミュニティを形成し、つながりを深めていく様子が見られるようになってきました。最近では、フィットネスを行い健康的な食事を共にする部活動のような取り組みも自然発生的に広がっています。また、SENQ主催によるピッチイベントを開催し、大手企業や地方自治体、VCなどとの接点を創出しています。イベントは会員に限定せず広く開放しており、入居している方々が活躍できる場を積極的に作っています。

運営面での強みとして特筆すべきは、レセプションスタッフのホスピタリティです。レセプションスタッフは単なる受付業務だけでなく、入居者との日常的なコミュニケーションを大切にしており、個々の入居者を名前で呼んで挨拶するなど、入居者が自社のオフィスに出社するような親密な雰囲気を作り出しています。

多彩な経験を活かし新領域へ。起業家やスタートアップと大企業をつなぐ役割を担う

SENQ青山並木通りのラウンジ

合戸さんご自身のこれまでのキャリアについてお聞かせください。

私は新卒で大手石油会社に入社し、コーポレート部門やBtoBビジネス部門など、ジェネラリストとして幅広い業務を経験してきました。直近では、全国のガソリンスタンドを活用した新たなサービス開発を担当し、自社にはない新たなアイデアや技術を求めて積極的にオープンイノベーションに取り組んでいました。また、「アクセラレータープログラム」の開催を通じて多くのスタートアップと交流機会を持ち、出資先スタートアップの事業支援も行っていました。

40歳という1つの節目を迎え、新しい業界にチャレンジしたいという思いから、2024年9月に中央日本土地建物に転職しました。前職は人々の生活を支えるインフラ企業でしたが、転職後も同様にインフラに関わる仕事がしたいと考えていました。デベロッパーは、人々が人生の大半を過ごすオフィスや住居という場所の快適さを提供する、重要なインフラの担い手です。この点に強く共感し、場所を通じて人々に貢献できる仕事に魅力を感じました。

過去の経験がインキュベーションマネージャーとしての役割に活きていることはありますか?

前職でさまざまな立場を経験したことで、同じ案件でも立場によって捉え方がまったく異なることを学びました。この多角的な視点は、起業家支援において非常に重要だと感じています。

また、大企業での経験を活かし、起業家やスタートアップと大企業をつなぐ役割も担っています。大企業は新規事業を検討する際、相応のマーケットボリュームが見込めない、定量的な効果が見通せない場合には参入を躊躇する傾向があります。一方で、スタートアップは新しいことに挑戦しているからこそ、なかなか定量的な成果を示すことができません。この両者の考え方の違いを理解した上で、より良い関係構築のサポートができればと考えています。

孤独な経営者を支え、スタートアップの課題に寄り添う。SENQが描く支援の具体例

SENQ青山並木通り3周年集合写真

どのように施設を運営していきたいか、心がけていることや具体的な方針があれば教えてください。

まずはどういった方々が入居されているのかを把握することが大切だと考えているため、各所で開催されているイベントに積極的に顔を出すように心がけています。その上で、1on1の面談を通じて、今後どのような事業展開を考え、どういった課題を抱えているのか、そしてSENQという場で何をサポートできるのかを丁寧にヒアリングしています。

ヒアリングを通じて、とくにシードステージのスタートアップ企業が抱える課題が見えてきました。数名規模の企業では、人事や法務といったバックオフィス機能を経営者自身が担当しており、そこにかなりの手間がかかっているという声が多く聞かれます。そこで現在、バックオフィスサービスをパッケージとして提供できないか検討を進めています。まずは希望するスタートアップを選定して試験的に提供し、最終的にはSENQ全体で必要な企業に提供できるサービスとして展開することを計画しています。

そしてスタートアップへの投資判断において、事業内容以上に重要なのは「人」だと思います。経営者自身がどんな困難な状況でも事業をやり遂げる決意と、その専門分野において「他の誰にも負けない」という強い気持ちを持ち、その強みをどんどんアピールしてほしいですね。

支援されている中で、印象に残っていることはありますか?

まだ転職して間もない段階ですが、各拠点を訪れるたびに新しい発見があります。拠点ごとに異なる特色がありますが、入居者の方々の素早い行動力や、状況に応じた柔軟な事業展開には日々刺激を受けています。

また、起業家やスタートアップの方々と接する中で強く感じるのは、経営側の孤独感です。皆さん、難しい経営判断に迫られながら、孤独や孤立と向き合いながら戦われているように感じます。そのような日々の中、インキュベーションマネージャーとの会話を通して、不安な時に落ち着きを取り戻したり、自身の心の内を整理したりする場の1つとなれるように、支援していきたいと考えています。

起業家の成長と共創を支える場所へ。SENQが拓くオープンイノベーションの未来

SENQ青山並木通りの受付カウンター

起業家と、どのようなことを実現したいとお考えですか?

SENQには、より幅広い業界の起業家やスタートアップ企業に入居していただきたいと考えています。とくに社会課題の解決を通じて新しい事業を創造していきたいという強い想いや夢を持った方々に入居していただき、コミュニティの中で成長していってほしいです。

最も理想的なのは、入居者の方々がSENQでの経験を活かして成長し、巣立っていくことです。そして、その後もOBとしてアルムナイコミュニティを作り、新たに入居してきた方々をサポートしていただけるような循環ができれば、コミュニティの魅力がさらに高まると考えています。

今後の展望についてお聞かせください。

2027年には、「(仮称)虎ノ門イノベーションセンター」が開設される予定で、私もその立ち上げ準備に携わっています。このセンターは、起業家に限らず官民のさまざまな方々が集う場となります。現代の社会課題は個人や1社で解決できるような単純なものではなく、非常に複雑化しています。そのため、人々が知恵や経験を出し合って課題を解決できるような場所を作っていきたいですし、現在のSENQのコミュニティは、将来的にそうした大きな取り組みにつながっていく基盤になると考えています。

私自身は9月に転職してきたばかりで経験も浅く、起業経験もありません。しかし、前職で大企業との連携や協業を推進してきた経験を活かし、スタートアップと大企業をつなぐ架け橋となれればと考えています。

そういった想いから「INCU Tokyo」にも参加されたのでしょうか?

はい。参加した理由は主に2つあります。1つは、インキュベーションマネージャーとしての学びを深めたいという思いです。もう1つは、施設間の連携を強化したいという目的です。社会課題解決という目標に向けては、施設間で協力し合うことが重要であり、情報交換やピッチイベントなど、他施設との連携を通じて、最適な支援を提供していきたいと考えています。

SENQは当初からオープンイノベーションオフィスとして、そこに注力してきましたが、コロナ禍でその機能が充分に発揮できていない部分もありました。今後は、現在入居されている方々はもちろん、これから入居される方々にとっても、より魅力的な場所となるよう努めていきたいと思います。

記載内容は2025年1月時点のものです。

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