Interview

正面を向いている内田氏
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城南エリアから、抜群のバックアップ体制を届ける。信用金庫ならではの手厚い創業支援

J-Create⁺

城南信用金庫が2018年に開設した創業支援施設「J-Create+」。お客さまのお悩み事や企業の経営課題解決、そして地域を守り元気にするというミッションを持って「お客さま応援企業」をめざす城南信金が、起業家に対して創業の場を提供する意義やこれまでの成果について、当金庫企業経営サポート部の職員でインキュベーションマネージャーを務める内田氏に聞きました。

プロフィール

大学卒業後、城南信用金庫に入職。4店舗経験し、2018年にお客様の経営相談を専門的に受ける企業経営サポート部に配属となる。2021年より創業支援施設「J-Create⁺」のインキュベーションマネージャーを務める。

信用金庫が運営する施設としての強みを入居者にもフル活用してもらいたい

J-Create⁺の施設の様子

J-Create⁺(ジェイクリエイトプラス)の施設概要について教えてください。

J-Create⁺は城南信用金庫が開設した創業支援施設です。お客さまのお悩み事や不安の解消、企業の経営課題解決、地域活性化をめざして起業家に創業の場を提供し、スタートアップ時から総合的な支援を行っています。

ワーキングプレイスは、東京都大田区の西蒲田にある城南信用金庫蓮沼支店の3階にあり、交通の便が良い場所に立地しているのも特徴の一つです。

施設には10室の個室があり、ここは完全に入居者専用となっています。24時間利用可能で、入居者が不自由なく使える環境を提供しています。

どのような方々を対象に支援しているのでしょうか?

特定の業種に限定することはなく、幅広い分野の起業家を対象に入居を募集してきました。

J-Create⁺のある大田区は製造業が大変盛んな地域ですが、ここへの入居はもちろん製造業を経営する方に限りませんし、製造業の方々に役立つような事業を展開したい方や新たなチャレンジをしたい方を積極的に受け入れています。

これまでの入居者の例としても、広告業を始めたいと一念発起した大学生、星空に特化した旅行企画を主とする旅行業、中古産業機器のプラットフォームを立ち上げる方など多様な業種の方々が利用しています。

入居からこの施設を卒業するまでの流れを教えてください。

入居の流れは、まずJ-Create⁺のホームページから内覧の申し込みをお願いしております。内覧後、施設に興味を持っていただいた場合、書類審査と面接審査を経て入居契約を結びます。

入居可能な期間は原則2年間で、必要と認められる場合はさらに2年延長可能で、最長4年間まで入居可能です。

多くの入居者は契約満了まで滞在し、事業が軌道に乗って独立した店舗を持つ場合や、従業員の増加により手狭になった場合などの理由で卒業していきます。J-Create⁺では入居者の経営基盤がまずは盤石となるようめざしていただき、次のステップに進むためのあらゆるサポートを提供しています。

城南信用金庫の企業支援の特徴は何ですか?

城南信用金庫は、もともと企業支援において「応援」という姿勢を強く持っています。経営基盤を築く支援に力を入れていて、それは私たちの強みでもあります。経営者の孤独感を軽減するため、さまざまな専門家や他の経営者との出会いの場を提供しています。具体的には、弁護士や税理士などの専門家、先輩社長や後輩社長との交流の機会を設けています。

J-Create⁺でも、支援を受けた起業家が自信を持ってこの施設から「卒業」できてきていることは、運営している私たちにとっても喜びですね。

事業者が困った時にこそ手を差し伸べられる存在でありたい。震災での経験を経て

入居者の相談に乗る内田氏

内田さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。

私はこれまで城南信用金庫で20年間勤務し、そのうち約14年は4つの支店を経験してきました。

とくに、2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災時、都心の支店にいた際には多くの事業者が苦労する姿を見ていて、自分も伴走スキルを強化したいと感じました。そうして専門的知識の必要性を感じ、中小企業診断士資格取得をめざしました。

会社の資格取得奨励制度を活用し、2018年に中小企業診断士を取得。その後、企業経営サポート部に異動し、主に事業者の経営相談業務に従事。2021年4月からはJ-Create⁺のインキュベーションマネージャーとしての業務も兼務しています。

支店から企業経営サポート部に移ってからの業務は変化も大きかったのでは、と想像します。

企業経営サポート部は、預金や融資を直接取扱わない、従来の金融機関とは異なる部署です。
経営課題を抱えるお客さまの課題解決につながる活動を専業として行う部署であり、私はそういった信用金庫としての動き方に以前から興味を持っていました。

とくに、2015年6月に立ち上がった「城南なんでも相談プラザ」という機能に関心があり、より企業に寄り添い、伴走できる職務に魅力を感じていました。このような部署で働くことで、企業の成長により直接的に貢献できると考えました。

企業経営サポート部に来てからは、これまでの4店舗で多くの顧客と関わってきた経験を活かしつつ、より、経営者の想いに伴走する形でお客さまのために動きたいという想いが強くなりましたし、それが実践できるようになりました。

これは城南信用金庫全体の共通価値観でもあり、お客さま応援企業としての理念が組織全体に浸透しています。顧客との関係性を非常に大切にしており、顔の見える関係づくりを重視しているのですが、それがJ-Create⁺ での支援活動にも活かされていると思っています。

インキュベーションマネージャーの体制と仕事内容について教えてください。

インキュベーションマネージャーは、この施設の始まった当初は外部の中小企業診断士の方が担当してくれていました。そうして進めてきて、城南信用金庫としても3年間のノウハウ蓄積後、内部人材である私が2代目として引き継ぎました。

私はインキュベーションマネージャーとしての専任ではなく、「城南なんでも相談プラザ」で販路拡大の相談などの経営相談を受けながら、J-Create⁺には月に6回程度訪問し、入居者との毎月1回以上の定例面談を行っております。

J-Create⁺入居者との面談を行いつつ、相談プラザの業務も並行して担当しているので、私自身の経験や知見をシームレスに企業経営者の方々に活用してもらうことで経営基盤の構築の一助になれたらと思っています。

中小企業診断士を持つインキュベーションマネージャーとして。真摯で綿密な対応を

起業家とブース出店した様子

入居者の方々のお悩みにはどのようなものがありますか?

多岐にわたりますが、たとえば、コロナ禍以降増加した補助金に関する相談は多くありました。

補助金の内容理解から事業計画の作成、申請、採択後の報告書作成まで。中小企業診断士としての知見もフル活用し、全面的にサポートしています。また、新規雇用に関する相談も多く、採用方法や育成方法、社内体制の構築などについてアドバイスを行っていますね。これらの相談に対してできる限り丁寧に対応し、入居企業の方々の事業成長を支援しています。

企業支援の経験で印象に残っていることがあれば教えてください。

入庫して3年目の時に、飲食店の創業を考えている方の事業計画書を見直す機会がありました。その際、起業しようとする方が熱意を優先するあまりに見落としがちな点、たとえば徹底した競合店調査や流行店の調査だったり、モーニング、ランチ、ディナー全時間帯でのターゲット設定や価格設定だったりについて一緒になって考えました。この時からお客さまに寄り添い、一緒になって考える姿勢を持ち続けています。

また、城南信用金庫という母体を持つ施設のインキュベーションマネージャーとしては、企業が融資を受けるタイミングについてアドバイスすることは重要な役割の一つです。

創業したての起業家にとって、成長期に入る際の適切な融資タイミングを見極めるのは難しいと思います。後になって資金が足りなくなってから融資を申し込むということにならないように、企業の現状、支払いのサイトなどを考慮し、最適なタイミングでの借り入れを提案しています。

また、融資の必要性が生じた時は、すぐに支店の融資担当者とも情報を共有し、スムーズな融資プロセスを支援しています。このような金融調達のサポートは、J-Create⁺の特徴的な強みの一つだと考えています。

城南信用金庫内のみならず、外部連携も行うことは多いのでしょうか?

経営者支援において、城南信用金庫はさまざまな外部機関と連携しています。

具体的には、公的機関との関係を構築し、相談や情報交換を行っています。また、近隣のインキュベーション施設とも関係を深め、年1回のイベントや交流会に参加して入居者との交流の機会を設けています。

さらに、東京都内の他の創業支援施設とも競争ではなく協働の関係を築き、東京都の創業支援の盛り上げをめざしています。これらの連携を通じて、入居されている方々に多様な出会いと支援の機会を提供できればと思っています。

内田さんがインキュベーションマネージャーとして大切にしている価値観や心がけていることがあれば教えてください。

まずは、「入居者ファースト」です。入居者の方が困っていたら、真っ先に動ける存在でいたい。そのため、入居者の方々が悩んだときにすぐに声をかけてもらえるような関係性を常に大切にしています。そして、相談を受けたらすぐに行動に移しています。

たとえば、入居者同士のつながりを活かしたサポートも行っています。自社のwebサイトが検索エンジンで上位になるためにはどのような対策をしたらいいのかと悩む入居者がいれば、web専門の入居者やJ-Create⁺卒業生の企業を紹介しました。別の事例で、動画制作をお願いしていた外注先では対応できず、急ぎで動画制作できる会社を探していた入居者には、動画制作も得意とする入居者をすぐにつなぎました。このように、入居者の方々のニーズに迅速かつ適切に対応することを心がけています。

なんでも相談してもらえる機能を持つ、お客さま応援集団として

J-Create⁺のキッチンスペースの様子

今後、どのような企業や起業家に入居してほしいと考えていますか?

さまざまな段階の起業家や企業を受け入れる姿勢を持っています。起業を考えている人、すでに創業している人、成長期に入った企業など創業後5年未満の事業者の方であれば、それ以外の要件はとくに設けていません。重要なのは、やりたいことが明確で、城南信用金庫やJ-Create⁺の支援を必要としている方々であるということです。

起業や事業拡大には勇気が必要です。挑戦する人たちを応援したいと強く思います。また、大田区に魅力を感じて卒業後も地域に残る企業も多いため、地域経済への貢献も可能であれば長期的に応援していきたいですね。

まずは、想いや熱意を持った起業家の方に入居していただきたいと思います。とくに、事業計画書から熱意が感じられる方や、公共や社会貢献の視点を持った方は歓迎しています。ただし、必ずしもそういった領域のみに限定しているわけではなく、そういった視点を持っていらっしゃる企業とこの施設が出会えれば、起業家の方にとってもメリットを感じていただきやすいのではないかという意味ですね。自分本位ではなく、より広い視野を持った事業者の方を求めています。

インキュベーション・コミュニティ「INCU Tokyo」に今後期待することがあれば教えてください。

INCU Tokyoに申し込んだ主な理由は、J-Create⁺の規模の制限を補完するためです。J-Create⁺は10室ありますが、現在は1室を当金庫で使用しているため、最大9事業者の入居となり、横のつながりが少し不足していると感じていました。

他の施設の起業家の方々とこのコミュニティを通じて交流することで、起業家の皆さんの考え方が変わったりヒントになったり、仕事上のつながりができる可能性があると考えています。

最後に、今後のインキュベーターとしての目標やビジョンがあれば教えてください。

相談できる相手として私たちを活用してもらえる仕組みをより整えていきたいですね。J-Create⁺への入居中はもちろん、卒業後も無料で経営相談に応じています。実際に、卒業された方々も時々顔を出して相談に来られます。これは、当金庫が運営する「城南なんでも相談プラザ」があるからこそ可能になっております。

信用金庫が運営するインキュベーション施設として、入居者に対して総合的かつ徹底的な支援を提供する「お節介集団」として機能していけたらと思います。私自身もその一員として、いつでも対応させていただいていますし、このような継続的なサポート体制が入居者の方々にとって大きな安心感につながっていけば嬉しいです。

記載内容は2024年10月時点のものです。

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