Interview

長谷部氏がイベントで話している様子
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ローカルからsmall good businessを。挑戦・実現できる場をつくる

BUSO AGORA

町田にあるコワーキング&シェアオフィスBUSO AGORAでインキュベーションマネージャーを務める長谷部 信樹氏。「ローカルにsmall good businessを生み出すこと」をミッションとし、個別相談やセミナー開催を通じて創業を支援しています。地域の活性化を願う長谷部氏の熱い想いに迫ります。

プロフィール

2004年(株)キープ・ウィルダイニング入社。専務取締役を歴任。2019年新規事業であるコワーキングスペースBUSO AGORAを立ち上げ。
その後、小田急SCディベロップメント様、多摩信用金庫様、関東学院大学様の3拠点をプロデュース・運営受託。2024年9月に上記4拠点を分社し、(株)AGORAを設立、CEO就任。

町田の未来をみんなでつくる場所にしたい。BUSO AGORAが提供する価値

BUSOAGORAのミーティングスペース

最初に、BUSO AGORAの特徴を教えてください。

BUSO AGORA(武相アゴラ)は、町田駅から徒歩3分の商業ビル内にあります。約160坪の広さで、現在170名ほどの会員が利用しています。フリースペースと固定のシェアオフィスがあり、交流やコミュニティ促進のためのイベントも開催可能です。

もともと飲食事業を行っていた会社が立ち上げた施設で、カフェの雰囲気をイメージしてデザインしました。コワーキングスペースというよりも、カフェで仕事をするような感覚で利用できる空間をめざしています。

会社登記も可能なので、法人として入居する方もいれば、フリーランスの方、企業に勤めていてテレワークの拠点として利用する方もいます。とくにクリエイターやデザイナー、映像制作者、コンサルタントなどの利用が多い印象です。

BUSO AGORAでは、入居者に対してどのようなサポートをしていますか?

入居者からの問い合わせに応じて事業相談を行っています。ノウハウを提供するだけではなく、事業の実現に近づけるようにサポートしています。学ぶだけで終わるのではなく「行動に移すための支援をすること」を大事にしていますね。

入居者以外にも、利用者や地域の方と連携されていると伺いました。どのような取り組みをされているのでしょうか?

大きく分けて3つの取り組みをしています。

1つめは、地域に根ざしたセミナーの開催です。たとえば、「武相まちづくりカンファレンス」と題して、地元の経営者によるトークセッションや地方創生の事例紹介などを年4回ほど行っています。参加者同士の交流や意見交換の機会を設け、地域の人が街の未来について考えるきっかけを作っています。

2つめはビジネスコンテストの開催です。5回目を迎えた今年は、町田新産業創造センターと多摩信用金庫との3社合同開催となりました。年々エントリー数は増加し、さまざまな起業家と出会える機会となっています。起業家の強い意志とエネルギーを感じることができ、非常にモチベーションが上がります。

そして3つめは大学との連携です。和光大学のゼミ生と連携して「まちまちトーク・クロッシング」というイベントを開催しています。具体的にはイベントのテーマ選びから講師の選定まで学生が主体的に行い、BUSO AGORAのスタッフがアドバイスや支援をしています。

飲食業で創業支援に携わる。培った“small good business”の哲学

長谷部氏が仕事をしている様子

長谷部さんは、これまでどんなキャリアを歩んできたのでしょうか。

学生時代にアルバイトをしていた小さな焼鳥屋に就職しました。当時はまだ会社になっておらず、個人事業主のお店です。20代は現場で働き、30代は会社の体制作りに注力しました。バックオフィスの立ち上げ、財務管理、人事部の設立、新卒採用の開始、労務改善などを担当。労務面では、社員の労働時間を50%カットするなどの改革を行いました。

実は学生時代は法律の道に進もうと考えていたので、「飲食業をやってみてダメだったら元の道に戻ればいい」くらいの心持ちだったんです。ですが結果として会社がどんどん成長し、気づけば10年も在籍していたことになりますね。その後新規事業開発部門に異動し、BUSO AGORAの立ち上げに関わることになって、独立したんです。

なぜBUSO AGORAを立ち上げることになったのでしょうか。

飲食事業を展開していたころ、店舗数が増加する中で、全国展開や海外進出を考えていましたが、最終的に地域に根ざした事業を選択しました。「自分たちの地元をもっと豊かにする」という方針のもと、東京ローカルでの意味を見出し、“small good business”いう概念を提唱したんです。これは、小規模でもスタートし、自分の続けたい仕事を地域で起こすという考えです。この地域性を活かすことで、都心との差別化を図り、ここでしかできない価値を生み出すことをめざしています。

BUSO AGORAは、町田という地域に小規模でもビジネスを昇華させられるハブをつくり、誰もが挑戦できる場にしたいという想いから立ち上げに至りました。AGORAはもともとギリシャ語で「広場」という意味。新しいコミュニケーションが生まれる場にしたいという想いを込めています。

ご自身の飲食業界での経験は、起業家支援にどのように活かされていますか?

ゼロから部署を立ち上げた経験が、今、とても役立っていますね。具体的には、資金調達、人事、労務、店舗開発などの経験が、起業家支援に活きていると感じます。

飲食業界は不人気職種と言われていました。都心に店があるわけではないので、待っているだけでは求める人材は来てくれません。人材を引きつけるためのアプローチや資金繰りなど、さまざまな課題に直面しながら解決策を見出してきた経験が、起業家マインドを養うのに役立ったと感じています。

起業家を支援する際、どんなことを心がけていますか?

一番大切にしているのは、「事業実現化」ですね。単に知識やノウハウを提供するだけでなく、実際の行動に移すことを促進しています。「1聞いたら10動いてほしい」という言葉をよく使うんですが、セミナーを聞くだけでなく、実際に商品を売ったり顧客を開拓したりするなど具体的な行動を重視しています。また、支援する私たちも自ら行動し、支援対象者に伝えることが大切だと考えています。

創業支援の現場で感じる意思と熱気。BUSO AGORAで生まれる共創

長谷部氏がミーティングをしている様子

これまで創業支援に携わってきた中で、とくに印象に残っている出来事を教えてください。

BUSO AGORAオープン当時からお付き合いのある、動物病院の先生は印象に残っていますね。当時「動物病院を立ち上げたい」という話がありまして。AGORAのコミュニティを活用して、事業計画の作成、物件の確保、ホームページやロゴの制作など、BUSO AGORAの資源を最大限に活用して事業を立ち上げたんです。会員さんに告知した結果、オープニングセレモニーには300人ほどが集まりました。

私たちが「一部を支援」することは多々ありますが、「フルパッケージを活用」して事業を作られた例はあまりなかったので、インパクトが強かったですね。BUSO AGORAの理想的な活用方法だと思っています。

創業支援に携わる中で、どんな時にやりがいを感じますか。

意思を強く持っている人、熱気がある人と一緒に新しい何かをつくり出せることですね。

ビジネスコンテストを開催すると、エネルギーに満ち溢れた人が、自ら事業をパワフルに推進していく姿を目にします。やる気に満ちた起業家の方に出会うと、素直にすごいなと尊敬しますし、自分自身のモチベーションも上がります。AGORAという場で、皆さんと新しいモノやコトを生み出せることがやりがいですね。

コミュニティの力で活性化をめざす──ローカルから広がる新たな世界

BUSOAGORAのフリースペースの様子

今後、BUSO AGORAをどのように運営していきたいですか?

設立時から「さまざまな人や事業者が集まる場を作る」ことをコンセプトとしてきました。今後は行政や地域の事業者、大学などとの連携を強化していきたいと考えています。

どのような起業家に入居してほしいと考えていますか?

ローカルのスタートアップですね。地域の問題や課題を解決しながら成長していくようなビジネスを手がける方々です。ローカルの課題を解決しながら、ある程度の規模で成長をめざす“small good business”を展開する方が入居されると、地域にとってもBUSO AGORAにとっても非常に良いと思います。

AGORAを通じて実現したいことを教えてください。

東京のローカルだけでなく、日本の地方都市でも事業を展開したいと考えています。とくに、なかなか活性化が進まない地域でインキュベーションやローカルビジネスを生み出し、それによって地域が少しでも活性化するような場を作りたいという想いが強くあります。

私自身が鳥取県出身ということもあり、都心よりも地方に目を向けて事業を展開していきたいんです。実は現在、鳥取に住みながら、オンラインでマネジメントを行っています。地域のコミュニティ作りを進めながら、次のステップとしてローカルへの展開を強く意識しています。

最後に、INCU Tokyoで実現したいことを教えてください。

コワーキングやインキュベーション業界はまだ成熟していない新しい業界だと感じています。飲食業界のように、さまざまな事業者や業種、フェーズによって横のつながりがあり、コミュニケーションが活発になることを期待しています。事業者間でのプロジェクトの共同実施や、大きなイベントの共催など、一緒に取り組みを育てていけるような関係性ができるといいなと思いますね。

記載内容は2024年9月時点のものです。

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