Interview

正面を向いて笑う髙田氏
25

子育てと起業経験から生まれた支援の形。仕事も育児も諦めない社会のために

マフィス北参道

「働き方も子育ても、もっと自由でいい」。そんな想いから2014年にオクシイ株式会社を設立し、保育付きシェアオフィス「マフィス」を立ち上げた髙田 麻衣子氏。渋谷区千駄ヶ谷にある「マフィス北参道」を軸に、子育てと仕事の両立を支えるための施設運営に懸ける想いを語ります。

プロフィール

大阪市立大学生活科学部を卒業後、不動産ディベロッパーであるスペースデザインへ就職。その後、不動産会社トーセイに転職し、女性初の管理職を経験。自身の妊娠・出産を経て、「家と保育園・職場を隣接させることで、子育てにゆとりと笑顔を生み出す『新しい働きかた』を実現したい」と、2014年にオクシイ株式会社を設立。

新しい働きかたの実現をめざす、マフィス北参道

マフィス北参道の外観

「マフィス北参道」の概要について教えてください。

マフィス北参道は、渋谷区千駄ヶ谷にある特徴的なコワーキングスペースです。都営地下鉄北参道駅から徒歩3分という立地にあり、原宿駅や千駄ヶ谷駅なども徒歩圏内にあります。施設は3階建ての建物の2階と3階、そして屋上を利用。2階はオフィススペースとして、6つの個室と20席のフリーデスクを設けています。

私たちの施設の特徴は、保育園とオフィスを併設していること。3階は完全に保育園として運営しており、0歳から2歳までの子どもたちを各9名ずつ合計27名お預かりしています。保育園だけを利用する方、オフィスだけを利用する方、両方を利用する方とさまざまなニーズに対応しています。企業主導型保育事業として運営しているため、法人契約でご利用いただくことも可能です。

施設の利用者は、起業家やフリーランスの方が多く、法人化前後の段階の方や住所登記目的で利用される方もいらっしゃいます。業種は多岐にわたりますが、IT系やデザイナー、ウェブディレクター、弁護士、経営コンサルタントなど専門性を活かした仕事をされている方が多い印象です。

施設の利用者向けに、どのような支援を行っていますか?

私自身、会社員から起業家として独立をした立場なので、その10年の中で経験してきたことをアウトプットしながら入居者個別のニーズに応じたサポートを行うようにしています。

ご相談に応じて壁打ち相手となったり、専門家を紹介したり、定期的なセミナーも開催しています。

たとえば、個人事業主から法人化した方や、会社員から個人事業主になられた方が悩みやすいポイントである確定申告のセミナーを行っています。また、昨年はインボイス制度が新たに始まったため、そこにまつわる知識を身につけられるようなセミナーを行いました。

起業家向けには、先輩起業家の話が聞けるようなオンラインウェブセミナーも行っています。創業時から現在に至るまで、いろいろな苦労話も含めた話を聞かせていただきながら、どのような取り組みの中で成長してこられたか語っていただくような内容です。

自分自身がどんなフェーズでどんな悩みを抱えていたか、実体験を思い出しながら悩みに寄り添えるような企画を行っています。

子育てと仕事のジレンマ。ワーキングマザーの経験から保育付きシェアオフィスの設立へ

外で正面を向いて笑う髙田氏

これまでどんなキャリアを歩んできましたか?

私のキャリアは不動産業界からスタートしました。17年間、この業界でさまざまな経験を積みました。開発用地の仕入れや分譲マンションの販売、ハイエンド向けサービスアパートメントのリーシングという営業経験だけでなく、バックオフィス業務や広報IR、人事、採用など幅広い分野に携わる機会に恵まれました。この多岐にわたる経験とそこで築いた人脈は、私の大切な財産となっています。

現在の事業のきっかけとなったのは、私自身が2人の小さな子どもを育てながらワーキングマザーとして働いていた経験です。

周りが遅くまで仕事をしている中で早く帰ることへの後ろめたさ。帰宅後も生活を回すために走り回る日々。子育てをしながらフルタイムで働くことの大変さを、身をもって感じる中で、これほど努力しているのに仕事も子育ても十分に満足のいく形でできていないというジレンマを常に抱えていました。

この経験から、「もう少し肩の力を抜いて、やるべきことに優先順位をつけながら納得のいく生活を送りたい」という想いが芽生えました。そして、それは私だけでなく、多くのワーキングペアレンツに共通するものではないかと考えました。

そういった想いがきっかけとなって、この施設を立ち上げたんですね。

そうです。自分自身の課題を社会課題として捉え直し、それを解決できるような場作りへ。それが、保育付きシェアオフィス「マフィス」立ち上げの背景となりました。

家族全員の幸せのためには、やはり保護者の方々が心身ともに元気でいることが大切です。そのため、子育てと仕事の両立に悩む方々に、新しい働き方を提案できるような施設にしたいと考えました。

身軽に施設を利用できるように。支援に込めた想いと経験

マフィス北参道に併設している保育園

実際に施設を立ち上げていく中で、どんなことを心がけましたか?

子育て中の方々に向け、負担を軽減することを心がけました。

併設している保育園では紙おむつに名前を書く手間を省くため、利用サービスに紙おむつ代を含めたりお昼寝用バスタオルを使い放題にしたり、子どもの洋服の洗濯サービスを盛り込んだりするなどの工夫をしていきました。

また、自宅に帰ってからの食事を手軽に行えるよう給食の食材の質にこだわり、十分な量を提供することで1日の栄養バランスが取れるようにしていきました。

当施設の保育士に対しても「子どもたちにかける愛情と同じくらい、保護者に対する理解にも力を入れて欲しい」と伝えています。保護者に寄り添いながらも、施設としてしっかり運営ができるよう保育士向けのマニュアルや教育プログラムの作成にも力を入れてきました。

大切なのは、利用者の方々が身軽に施設を利用できること。保護者の方々がお子さんと関わる時間に重きをおいて、それ以外の部分を施設で引き受けられるよう設計していきました。

これまでの支援で印象に残っていることはありますか?

サービスのローンチから間もなく10年なので、さまざまなお客さまが印象に残っています。

保育園付きのオフィスを求めてこちらに引越してきて、施設をフル活用しながら資金調達にも成功し、事業を成長させていった方もいれば、保育園を利用しながら最初はフリーランスからはじめて法人化していった方もいました。

前者のケースでは、お母さまが先に独立起業されました。初めはお父さまが会社員を続けつつリモートワークの作業場として、ご夫婦で当施設を利用していただいていたのですが、事業が軌道にのり、お父さまも会社員を辞めて参画され、いまでは従業員を雇用するまでに成長されていきました。

当施設を利用することで、仕事のサポートだけでなく家庭運営のサポートまでできていることを実感できる時は、とても嬉しいですね。

「この場所があったからこそ自分の仕事に復帰できた」といった感謝の言葉をいただくと、この事業を始めて本当に良かったと実感します。

「INCU Tokyo」と共に──新しい働き方に応える施設づくりをめざす

マフィス北参道の受付

今後、どのような方たちに施設を利用してもらいたいですか?

ワーキングペアレンツはもちろん、子育てや家庭、教育といったテーマに興味がある方、新しい働き方を模索する方にもぜひ利用していただきたいと考えています。

今後は、さらに多様な働き方を支援していきたいと考えています。場所や時間にとらわれずに働きながら東京の都心にも拠点を持つという生活スタイルは、今後ますます増えていくでしょう。当社はそういった方々のニーズに応えられるようサービスの拡充を図っていきたいと思います。

インキュベーション・コミュニティ「INCU Tokyo」に、期待されていることはありますか?

まず、専門家の紹介です。当施設では全業種をカバーできないため、幅広い分野の専門家とのつながりが生まれれば、利用者の方々にとって大きな付加価値になると感じています。

また、INCU Tokyoのネットワークを活用することで、より多くの方々にセミナーの情報を届けられたら嬉しいです。他の施設の利用者にも情報を共有し、相互に協力できる関係が築けると良いですね。

施設同士での情報交換の場も期待しています。各施設の工夫や成功事例を共有することで、お互いに学び合える環境ができると思います。定期的に交流イベントを設けて密接な連携をしていくことで、それぞれの施設がよりよい発展をしていくことを願っています。

記載内容は2024年10月時点のものです。

インキュベーション・
コミュニティ
「INCU Tokyo」へ参加する

募集概要を確認のうえ、
下記から申し込みください。