Interview
地域と起業家の輪を広げていく──人と人とをつなげる多摩のCoCoプレイス
2021年よりコワーキングスペースCoCoプレイスのインキュベーションマネージャーとして活動を始めた浜田 有里恵氏。起業を経験した自分の強みを最大限に活かし、持続可能で成功するビジネスを築けるよう、創業相談、事業支援、交流会イベントを企画運営しています。起業家や地域とのつながりを大切に活動する姿を追います。
プロフィール
大手小売業やアパレル業で販売やスタッフ育成を経験後、出産を機にカラー講師として開業。女性のライフキャリアを豊かにする講座やカウンセリングで2,000人以上を支援。子育て中の女性を応援するコミュニティ運営を10年以上続け、地域ネットワークづくりや起業相談にも携わる。「自分らしくチャレンジできる社会」をめざし活動中。
保育室併設で子育て中も安心。CoCoプレイスが実現する新しい働き方
コワーキングスペースCoCoプレイスの特徴について教えてください。
CoCoプレイスは東京都多摩市の多摩センター駅から徒歩5分のショッピングセンター内にあります。アクセスが良く、多摩市だけでなく町田市や川崎市、八王子市など近隣地域からも多くの方にご利用いただいています。
運営母体は株式会社キャリア・マム(以下、キャリア・マム)で、2000年の創業以来女性の働き方支援に力を入れてきました。私たちがめざしていたのは、子育て中の方でもキャリアを閉ざすことなく保育室併設の働く場所でやりたいことを実現できる環境づくりです。
CoCoプレイスの最大の特徴は、コワーキングスペースと、生後6カ月から5歳児までを対象とした保育室が隣接していることです。廊下を介さずに直接つながっているため、保護者の方がすぐに子どもの様子を確認できる構造になっています。
施設内は靴を脱いで上がる家のような空間で、堅苦しさがないアットホームな雰囲気。また、同じショッピングセンター内の他の階でキャリアマムが運営している「しごとカフェ」や、ホールが使えるので、打ち合わせやイベントでも活用ができます。
単なる仕事場ではなく、人々がつながり新しいアイデアや事業が生まれる場所をめざし、初めて訪れた人でも気持ちよく過ごせる場所にしています。
起業家支援における当施設ならではの独自性や強みなどはありますか?
CoCoプレイスの強みは、地域交流と女性の起業支援にあります。地域で活動している人が多く、さまざまな交流会やイベントを通じて顔の見える関係性を築いています。たとえば、立川のStartup Hub Tokyo TAMA、多摩信用金庫が開設するコワーキングスペース・インキュベーションオフィスのme:rise(ミライズ )立川、多摩市で活動する多摩コミュニティビジネス研究会など、さまざまなグループとの交流を行っています。そして、キャリアマムの理念を引き継ぎ、女性起業家のサポートにも力を入れています。
定期的に「つながるカフェ会」という交流会を開催し、地域の人々がつながって仕事やサービスを生み出せるような支援を行っています。この交流会は誰でも参加可能で、多い時には40名ほどの参加があります。初めての方からCoCoプレイスの会員さんなどさまざまな人がつながる機会を提供しています。
人とのつながりが大きな力に。経験からの学びを支援に活かす
浜田さんご自身のこれまでのキャリアについてお聞かせください。
ファッション業界の小売業で8年間働いた後、結婚と出産を機に5年間専業主婦となりました。その時期は知り合いも、収入もゼロ。目標や未来が見えず、子育てをしながら「自分に合う人生、働き方はなんだろう」と毎日問いかけていました。
そんな中、0歳の子どもを連れて色彩学と心理学を学び直し、独学で資格を取得しました。2011年からはカラーサロンを個人で開業し、実績もない未経験の状態から地域のPTA、子育て広場、市民団体でセミナーや講演を行うようになりました。
その後、人材会社の正社員として再出発しましたが、親の介護で退職することに。あらためて自分らしい働き方や人生について考えるようになり、キャリア・カウンセリングを学び直して国家資格キャリアコンサルタントを取得。そこから、自分らしく生きたい人のためのライフキャリア支援を本格的に始め、2021年からコワーキングCoCoプレイスのインキュベーションマネージャーとして活動し始めました。
支援する上で心がけていることはなんでしょうか?
その人の強みや経験を活かせる点、魅力を見つけることです。同じ業種でも、それぞれに特徴や提供できるサービスが異なるため、それらを掘り下げて聴くようにしています。また、ブランディングにも注目しており、事業主やサービス、会社のブランディングまで持っていけるようサポートしています。
また、会員さん同士や地域でのつながりを促進することを心がけています。というのも、私が一人で事業を始めた時は、最初は何をどうしたらいいのかわからず本当に苦労の連続でした。その中で大きな転機となったのは、人とのつながりです。
他の人とコラボレーションしてイベントを行ったり、先輩起業家から学んだりすることで次のステップが見えてきました。この経験から、人とのつながりの重要性を痛感し、一人だけで頑張るのではなく、起業家や地域との横連携やコラボレーションを大切にしています。
具体的には、会員さん同士がお互いのことを知り、会話が生まれるきっかけになるよう、プチ交流会「ゆるっとおしゃべり会」をこれまで3回ほど開催しました。
これは会員の一人がホスト役となり、お茶やお酒などを飲みながら情報交換をするもの。抹茶が趣味の会員さんがホストのときは、抹茶を立てて他の会員さんに振る舞っていました。会員さん同士自然と会話が生まれるような仕掛けづくりができればなと思っています。
夢を語り合う仲間が支えに。会員同士がつながり生まれる新たな未来
支援されてきた中で、印象に残っていることはありますか?
「ココチャレ」という、6カ月間の学びと実践で事業のブラッシュアップをするセミナーを企画し、2021年からスタートしました。すでに40名ほどの卒業生がいて、会社を立ち上げたりビジネスプランコンテストに出て最優秀賞を取ったりと卒業後みなさんが自分に自信を持って活動されている様子を見ると、とてもうれしいですね。
その中でとくに印象に残っているのが元大手企業のエンジニアで、小さいお子さんをここの保育室に預けながらアクティブに活動されていた会員さんです。
ココチャレ参加中に一時海外に滞在されていたのですが、オンラインで参加するなど本当に精力的で。驚いたのは、じつはお腹に赤ちゃんがいて、帰国後に出産され、ITコンサルタントとして新しい会社も立ち上げられたことです。
その方は、当施設について、子連れで仕事ができ、安心して子どもを預けられる点をとても評価してくださいました。また、「ココチャレで自分のやりたいことを皆の前で話せることが楽しい」とも。話すことで自分のやりたいことがより明確になり、自信がついたそうです。
同じように応援し合える仲間ができたことに満足されており、現在も頻繁に施設を利用してくださっています。
そんな利用者の声を聞くと、モチベーションになりそうですね。
私が最もやりがいを感じるのは、会員さんたちの成長を目の当たりにできることなんです。最初は自信がない中勇気を振り絞って扉を叩いた会員さんが、サポートを通じてどんどん前向きに活動していく姿を見るのは本当にモチベーションにつながりますね。
たとえば、SNSで発信したり、名刺やチラシを作ったり、イベントを開催したり。また、会員さん同士がつながってコラボレーションしたり、一緒に仕事をしたりする様子を見るのは私も励みになります。
とくに、当施設で開催している「つながるカフェ会」などの交流会で出会った人同士が協力するケースが多く、そういった会員さん同士つながりを見られるのは嬉しいです。最近では学生の会員さんも増え、若い起業家の方々を支援できることも私たちにとっては大きなやりがいですね。
地域と若者がつながる場を。「長屋」のような場で育まれる新たなビジネスへ
今後、どのような起業家の方たちと一緒に活動していきたいですか?
これまで、地域の方々や女性、シニアの方など幅広い層の方々にご利用いただいてきましたが、今後はさらに多様な世代の方々に利用していただきたいと考えています。とくに、若い世代の方々の利用を増やしていきたいですね。
最近、学生の方も会員に加わり、施設の雰囲気を大いに盛り上げてくれています。若い世代が加わることで既存の会員さんたちも刺激を受け、新しいアイデアが生まれやすくなります。何か新しいことにチャレンジしたい、地域に関わりたい、自分のビジネスアイデアを形にしたいという若者の方々にはぜひ来ていただきたいですね。
当施設の設立時のビジョンは、多様なキャリアを持つ人々が互いにサポートし合える「長屋」のような場所を作ることでした。このビジョンは今も変わらず、むしろより強く意識しています。一人で頑張るのではなく、異なる背景を持つ人々がつながり、新しいアイデアを実現できる場所をめざしています。
そんな中で「INCU Tokyo」に参画されましたが、入られた背景や期待していることについて教えてください。
会員の皆さんが自然につながり、新しいことにチャレンジできる場所を作り続けるためには、私たち運営側も常に新しい取り組みにチャレンジしていく必要があります。その一環として、INCU Tokyoに参加しました。
これまで、多摩地域ではさまざまな施設を訪問したり、イベントに参加して勉強していましたが、都心部の情報にはあまり触れる機会がありませんでした。INCU Tokyoに参加することで、都心の素晴らしい施設や大きな夢を持つスタートアップ、外国籍の起業家の存在を知るなど、より広い視野を得ることができました。
また、他の施設から学ぶだけでなく、当施設の特徴や強みを他の施設に貢献できればと思っています。たとえば、当施設は地域との連携や女性の起業支援に力を入れており、個々の事業主の方のお悩みに寄り添った細やかな支援も行っています。これらのノウハウを他の施設と共有することで、より多くの起業家の方々の支援につながるのではないかと考えています。
記載内容は2024年11月時点のものです。
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