6月25日(水)にTokyo Innovation Baseにて、INCU Tokyoの令和7年度のキックオフとなる、「INCU Tokyo Kick Off Meeting 2025」を開催しました。
令和6年度より活動開始した、都内インキュベーション施設を繋ぐインキュベーション・コミュニティ「INCU Tokyo」ですが、さらに新規登録施設が増えて全108施設にご参画をいただいており、今年度も新たな取組を追加し、コミュニティ活動を更に拡大していきます。
イベントでは今年度の年間計画紹介に加え、登録施設や入居企業、コミュニティ構築プロデューサーを交えた起業家支援のリアルを知るトークセッション、施設運営に係る意見交換を行うワークショップ等を実施しました。

本レポートでは、当日のイベントの様子をご紹介します。
事業紹介・年間計画
INCU Tokyo運営事務局、(公財)東京都中小企業振興公社

事務局より、「INCU Tokyo」の概要説明や施設の登録状況、イベントの目的を説明し、今年度の事業紹介を行いました。
事業紹介では、今年度の全体方針として「コミュニティの発展・拡充、インキュベーション施設の価値向上」を掲げ、登録、連携支援、イベント、人材養成講座、施設見学会、ランチタイムミーティング、レポート/コラム、施設インタビュー、メルマガ配信等について、それぞれの今年度のスケジュールや取組概要をお伝えしました。
続いて、(公財)東京都中小企業振興公社より、登録施設が活用できるインキュベーション施設支援機能強化事業の紹介を行いました。
さらに、事務局より、「インキュベーションとは何か」という題で定義の説明からインキュベーション施設のはじまりや変遷、求められる役割をお伝えするほか、今後の施設発展のためにすべきこととして、INCU Tokyoが注力する施設の魅力向上策についてお伝えしました。
今年度のINCU Tokyoの取り組みを網羅的に発信した機会として、参加者からも多くの関心が寄せられました。
トークセッション
青木 雄太氏(BIRTH LAB / WORK)、山縣 伸行氏(株式会社ネルコ)、川路 武氏(株式会社Goldilocks)
モデレーター 渡邉 知氏(株式会社ファイアープレイス)

トークセッションでは、「起業家支援のリアル:インキュベーション施設の現場から学ぶ成功と失敗の事例」というテーマで、「“起業家支援”における施設の価値とは?」、「入居会員が求める価値とは?」、「価値提供のための人材要件とその役割とは?」という3つについて、コミュニティ構築プロデューサー、INCU Tokyo登録施設のインキュベーションマネージャー、登録施設の入居スタートアップ、というそれぞれの立場・視点からお話を伺いました。
「“起業家支援”における施設の価値とは?」について、青木氏からは、「起業家側は施設から受けられる様々なサポートのほか、そのサポートを駆使して頑張りたいという気持ちに伴走することが価値である。支援者側は上がった価値から何でリターンを得るか、起業家に支援できることを常に考えることが大事だ。過去に、支援をしたい思いが強すぎたため、起業家側が必要としていない支援を多く実施してしまい空回りしてしまった、という失敗を経験したが、それにより起業家との距離感、支援者側が本当に求める支援がなにかに気づけた。」というお話がありました。山縣氏からは、「施設に行けば自分でかなえたいことを頑張っている人が集まっているところが価値である」というお話がありました。
また、「入居会員が求める価値とは?」について、川路氏からは「コミュニティの最小単位に着目しているが、人付き合いで気を配るという面倒なところを施設側が受け持つことで、それが入居会員への価値につながる」、山縣氏からは「起業家としては、投資価値に対してバリューがつくかで施設を選んでいるが、加えて、施設スタッフとの対話、距離感、コミュニケーションについてメインではないが大事な価値」とお話いただきました。
さらに、「価値提供のための人材要件とその役割とは?」について、青木氏からは「コミュニティチームを置くことのリターンの設計が大事である」、川路氏からは「傾聴力、コミュニケーション力、ナレッジの吸収と共有などがあるが、特に“やり取りファースト”が大事で、小さなやり取りのきっかけを発生させることでそこから繋がりが生まれる」とお話いただきました。それに対し、山縣氏からは「やり取りファーストは重要で、入居側としては非常にうれしい」とご意見がありました。
ワークショップ

ワークショップでは、参加者が複数のグループに分かれ、テーブルごとに設定されたテーマに沿って活発な意見交換が行われました。今回はテーブルごとに下記4つのテーマを設定し、参加者の皆様には自身の関心のあるテーマのテーブルに移動していただきました。
- コミュニティ構築
- オープンイノベーション
- ダイバーシティ
- INCU Tokyo
インキュベーション・マネージャー、コミュニティ・マネージャー、起業家、企業の新規事業担当者、学生等幅広い属性の方にご参加いただき、参加者にてファシリテーターを務めていただきつつ、各々の意見を交わし合うことで、各テーブルで施設における事例や工夫、共通する課題感、INCU Tokyoを通じて実現したいアイデアについて共有、ディスカッションし、今後の取組への気づきが見つかる場となりました。以下は共有された主な意見です。
- コミュニティ構築:
きっかけ作りは交流会やテーマ特化イベント、オンラインコミュニティの活用が有効。施設側が入居者のサービスを利用することも関係性構築につながる。支援の深度としては、入居者同士や卒業生とのマッチング支援や、施設と入居者が目指す方向性を一致させる工夫が課題。 - オープンイノベーション:
オープンイノベーションが偶然に依存しているため、勉強会や交流会など「偶然の場」を定期開催する仕組みが必要。 - ダイバーシティ:
入居者の多様性を確保するには間口を広げる試みがあるが、意図した結果が得られない場合もある。属性を絞るかどうかのコントロールは難しい。 - INCU Tokyo:
人との関わり合いの方法について、名札等で入居者を色分けし、施設間で共通化することで会話のきっかけを作る案が出た。
交流会
プログラムの最後には、参加者同士の交流を深めることを目的に、スタンディング形式での交流会を開催しました。お菓子を楽しみながら、参加者間で自由に交流が行われました。
施設見学会

イベント終了後には、希望者を対象に恵比寿駅周辺の登録施設における施設見学が行われました。今回は、下記2施設にご協力いただきました。
参加者は実際に施設を訪問し、施設担当者との質疑応答も交えながら、各施設の特徴や運営上の工夫について相互に理解を深めることが出来ました。
参加者の声
- 「モデレーターの方々の貴重な意見を聞けた。」
- 「色々な方と情報交換できた。」
- 「トークセッションはそれぞれの視点で大変面白かった。」
- 「ディスカッションがよかった。一方で、ダイバーシティは少し難しいテーマのように感じた。」
- 「ワークショップは時間が足りなかったがヒントをいただけた。」
- 「お互い悩みを共有でき、よい経験になりました。」
INCU Tokyoでは、今後も各種イベントの開催や登録施設向けの支援を予定しております。
ご関心をお持ちの方は、ぜひ下記よりINCU Tokyo HPをご確認ください。
